第2話 遭遇
扉の前からすでに、尋常ならざる嫌な気配を感じます。吸血鬼に限らず、亜人というのは感覚が鋭いものです。きっともうぼくの存在に気付いていることでしょう。
そうと決まったらぐずぐずしてはいられません。ぼくはありったけの勇気を振り絞って、扉を開けると同時に、ほとんど悲鳴のような声で言いました。
「失礼します!」
途端に吹き付ける其れは、殺気、だったのでしょうか。
気が付くとぼくは、へなへなとその場に崩れ落ちておりました。部屋の中には四人の男女がおり、文字通り悪鬼のような表情でぼくを睨みつけておりました。
「あ、あ……」
意味をなさない声が勝手に出ます。ぼくは死ぬ。ここで死ぬ。疑いようもなくそう思いました。
ふと、空気が少し緩んだような気がしましたが、何の慰めにもなりません。部屋の奥にいた、女性の姿をしたなにものかが、ゆっくりとぼくに歩み寄ってきます。
「ねえ、ぼうや」
「はいっ!」
「V計画の新任?」
「そ、そうですっ」
つまり、きっとおそらくあなたの食事です。
このまま噛みつかれてしまうのでしょうか。残りの三人も近づいてきます。ぼくは彼らに囲まれる形になってしまいました。
ぼくは恐れるあまり気づかなかったのです。彼らの変化に。
「あのよ、さっきはガン飛ばしちまって悪かったな……また上のウゼーやつがウゼーこと言いに来たと思ったからさあ」
「そんなに怯えないでおくれよ。我々にも知性や分別はある。今のはちょっとびっくりしただけだ」
「新任、怖かったろう。もう大丈夫だぞ」
皆、口々にぼくを気遣う言葉を発して、軽く肩をたたいてくれました。恐怖が頂点に達したが故の幻覚でしょうか。
最初に声をかけてきた女性が、にっこりと笑ってぼくに尋ねました。
「出前取るけど、何がいい?」




