表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋愛系

委員長の仰せのままに

作者: KL

場所は学校。高校二年生のテストの返却が始まる。平均点は少し低くなった。点数が上がったと喜ぶのも下がったと嘆くものもいる。その中で満点をとるのは決まって同じクラスの委員長だ。

そして平均点より低く低迷気味の男がいる。


「心汰~どうだった?テスト」

「ぜんぜん駄目だ~やっぱ勉強しないと駄目か」


ため息をつき帰路に着く。正門を出たところで一人の女子が待っていた。


「こんにちは心汰君」

「ん?委員長かどした?」

「あのね君に大事な話があるの」

「何?(ちょっといい感じか?これ)」

「よく聞いて・・・あなたがこのクラスの平均点を下げています」

「えっ?」

「えっ?じゃなくて・・・私考えたのだけど勉強会をしましょう」


大して接点もなく名前も覚えていないような奴からの誘い。しかも半分強制的につれてこられた。女らしさの欠片もない部屋だ。心汰は初めて女子の部屋に入るが特に昂る事もなかった。


「委員長親とかは?」

「離婚して別居してるわ私は母親についたのだけど他の男とほっつき歩いているわ」

「・・・すまん話しにくかったな」

「いいのよはいこれ基本のプリントよやってみて」


ぺらっと渡されたプリント。あーうーと唸りながら解こうとするが全く出来ない。問一で躓いている。


「委員長~少し休憩させてくれよ」

「まだ始めて十分も経ってないわよ休むには早すぎるわ」

「・・・クソマジメめ」

「何か言った?まぁ一問も解けないよりはマシね」


頭が痛くなってきた。時間の流れる速度が遅すぎる。一分一秒が一時間に感じる。


「委員長もう駄目・・・」

「まだ三十分も経ってないのだけど・・・まぁいいわ今日はここまでにしときましょう」


やっと終わったと喜ぶ。帰り際委員長は、


「復習を忘れないようにね」

「へーへー仰せのままに」

「まったく・・・少しはマジメにしなさいよ」

「先生みたいだな委員長」

「そう?じゃあ勉強会のときは先生と呼んでよ」

「りょーかい先生♪」

「まったく・・・調子いいんだから」

こうして毎日彼女の家で勉強会があった。先に彼女が帰っていて準備などをしてくれる。

彼女は教えるのがうまかった。躓いていると助け舟を出してくれる。


「ほらここはこうやって・・・」

「なるほど・・・じゃあここもこうやれば」

「うん正解!できるようになってきたじゃない!」

「はは少し楽しくなってきたかも」

「そう?それは良かったわ先生冥利に尽きるわね」

「頼むよ先生!」

「ふふ分かったわよここはね・・・」


この時心汰は恋心を抱いた。顔が近い。考えがまとまらなくなってきた。

心に滑り込むようなきつめの視線がこちらに向くたびに心臓が跳ね上がる。


「どうしたの?手が止まってるわよ」

「いやなんでもないそういえば先生」

「なーにー?」

「俺いつも委員長とか先生って呼んでるけど名前を覚えてなくてさ」

「私はね翔子、内村翔子よというか今頃かしら」

「いやほんとごめん・・・」

「いいわよ元々私が無理矢理勉強させてるわけだしね」

「結構満更じゃあないけどな」


ふふと笑う翔子。その顔にドキッとする。細いフレームのメガネの先に目が離せない。


「はい今日はここまでにしましょうか」

「あれ?もうそんな時間かー」


時間が経つのが早く感じるようになった。彼女ともっと勉強していたい。そう思ってしまう。


「最近良くなってきたから来週のテストで平均点以上取れたらご褒美をあげるわ」

「本当?やったるぜ!」


意気込んでやったのは良かったものの段々失速気味になってきた。


「うーん飽きてきてしまった」

「でもあなた一人だとサボるでしょう?」

「そうなんだよねーどうしよう」

「二人でやるから意味があるのよ分かった?」

「はーい分かってるよー」

「私はあなたを留年させたくないのよ・・・私の為にも」


これでどんどん勉強は加速した。大元の頭は良いようでどんどん吸収していった。

そしてついに向かえたテスト前日。この日も勉強会だ。


「私が作ったこのテストやってみて」

「んりょーかい先生」


マジメに頭をフル動員して解く。全て埋まり翔子に提出するまでにさほど時間はかからなかった。


「はい先生できた」

「はいはい・・・どれどれ」


手ごたえは十分。テストの用紙に丸がついていくのが楽しい。しかし翔子はなぜか浮かない顔をしていた。


「全問正解よ良くできました」

「やったぜ!・・・先生?どうした?」

「・・・いいえなんでもないわよちょっと感動してるだけだから」


その顔は感動と言うより悲しげだった。心汰はそれが気になってしまう。どうしたのだろうか。


「さ今日はこのぐらいにしましょう帰ったら復習を忘れないでね」

「?分かったじゃあな」


本当は帰りたくない。でも迷惑するだろうと思ってあえて言わなかった。翔子は玄関先で、


「また明日ねご褒美考えておいて」

「りょーかいもう決まってるけどな」

「そう?なら良かったわじゃあ明日ね」

「じゃあ」


帰路に着く。復習を忘れずにやる。ほんの前までは古文書のようだった教科書も苦じゃなくなった。

全て翔子が教えてくれたことだ。あの時声をかけて貰わなかったらずっと底辺を歩いていただろう。


「ありがとな・・・先生」


不意に感謝が零れ落ちる。特に誰かいるわけじゃないのに赤面してしまう。

もう平常心は保てなかった。明日だ。明日テストをやってその翌日に返されれば決まる。

褒美なんていらない。ただ貰うとしたら勇気を貰いたい。そう思いつつ床に就いた。

一方そのころ翔子サイドは、


「この問題・・・結構難しくしたつもりだったのだけど・・・」


まさかここまでとは。そろそろ教えることもなくなってしまった。


「はぁ・・・勇気を出して家に呼んだつもりだったのにまさか勉強会とは・・・」



翔子はずっと目で追っていた。心汰のことを。入学して前を楽しそうに過ぎていく彼が。

最初はただ楽しそうだなぁと思っていたはずだった。それがいつの間にやら目で追う口実になっていた。


「教えることがなくなったらこの関係も終わりなのね」


ぽつりと呟く。この前まであーうーと唸っていたのに今では十分上位の成績に入れるだろう。

彼は素質は良いのだ。自分を抜かすぐらいに。今回のテストだって参考書を見なければ解けない。

それを解いたのだ。何も見ないで。私がその才能を開花させたのだ。と少し高揚してしまう。


「ご褒美何が欲しいって言うのかしらゲームだとかいいそうね」


ふふと一人寂しく笑う。心汰と翔子。考えていることは同じ。そのことに気づかずに翌日はやってくる。


「委員長ついにきたなこの日が」

「えぇ名前とか書き忘れないようにね」

「分かってるって委員長こそ気をつけろよな」

「りょーかい♪・・・あなたの真似よどう?」

「結構に似ててびっくりした・・・じゃあまた後で」

「また後で」


席に着く。翔子は瞑目し心汰は手をいじりながら。少しして先生が入ってきた。


「テストやるぞー席に着けー」


数学だ。昨日のお手製テストと同じ。筆記用具良し。名前も書いた。後は解くだけ。

カリカリと筆記用具の音が響く。時間いっぱいフルに使って見直し。番号の確認。

試験でもないのに何回も確認する。どこも不備が無い事を確認したとき先生が終わりを告げた。


「そこまで!後ろから回収しろー」


回収され帰っていく先生。回答は全て埋めた。あとは採点を待つだけだ。


「ふーすげぇ疲れた・・・」

「どうよ?今日のテストできそうか?心汰」

「うーん結構できたと思うぜ」


珍しく自信満々だなと言う。それはそうだ。点を取らなければ恩を返せない。

ちらっと翔子の方を見る。なにやらカバーのかかった本を見ている。そのすまし顔に心が惹かれる。

気が気じゃないが時間は過ぎていきさぁ帰ろうと思ったが自然と足は翔子の家に向かっていた。


「はいはい・・・あらどうしたの?」

「いつもの癖で・・・ほらもうここに来るのが当たり前になっちゃったからさ」

「そうねまぁ立ち話もなんだから中でお茶でもどう?」

「いいのか?じゃあお邪魔するぜ」


初めて勉強会以外で翔子の部屋を訪れる。最初来たときは素っ気無い部屋だったのがとても緊張する。


「紅茶でいいかしら」

「ぜんぜん構わないよありがとう」


出来る限り翔子に知られずに喜んだ。部屋に入ったはいいものの何を話そうか迷ってしまった。


「今日のテストどうだった?」

「普通に出来たわあなたは?」

「まぁ平均点以上はいけたと思う・・・ぞ」

「自信無さげねもっとシャキッとしなさいよご褒美もらえないわよ」

「そっかそうだよな!ありがと先生」

「ふふ先生ね勉強会も終わったのに」

「え、あ、いやもう癖だっての」


分かっているわよと笑う姿が堪らなくいい。全ては明日。


「じゃあおいとまするよまた明日」

「・・・ばいばい」


家に帰ると母がこういってきた。今日がテストだと言うと事は把握している。


「どうだったね?今日のテストは」

「あぁ今までに手ごたえだったよ」

「なら良かったほら晩飯だよ準備しな」


食器を並べ

二人で飯を食べる。母は時々途轍もなく勘が鋭いことがある。今日はそれが発動された。


「あんた・・・恋してるね」

「!ごほごほ!なんだよ急に!」

「図星かね大方お相手は・・・勉強会の先生みたいな人だね」

「・・・なんで分かったんだ」

「私はあんたの母親さ大体見りゃ分かる」


敵わんな。と頭をかく。明日告白するつもりでいると伝えると黙って首を縦に振った。

まるで幸運を祈る。だとかそう気張んな。と言っているように。

こういうときに親の応援は嬉しい。自分をよく知ってくれている人からがんばれと言われると心強い。


「ありがと母さん」

「いいって事よまぁ砕けても諦めんなよ?」

「もちろん俺がゲームを買ってほしいときの粘り強さ知ってるだろ?」

「私が怒鳴るととたんに手応えがなくなるけどね」


うっせぇやい。と部屋に入る。緊張はおかげで無くなった。明日は明日の風が吹く。

母の座右の銘らしい。母さんらしいや。と笑って眠りについた。


「おはようさぁテストを返すぞ今回は満点が二人いたぞー」


さぁさぁだれだ満点。とざわつく。一人は委員長で固定だな。と誰かがぼやく。


「内村ー満点!」

「ありがとうございます」


やっぱりな。あははと笑うひとがちらほらといる。まぁそうだろうだとは思っていた。


「おい川名!お前だぞ!」

「あっはい・・・」

「よくやったな満点だ!」

「・・・よっしゃぁぁぁ!!」


おいおいマジかよ。と言う奴がいる。いつに無く誇らしげに歩く。答案用紙には全問正解のあのマーク。

平均点を超え満点だ。全て翔子のおかげでこの点数を取れたのだ。やはり感謝はしなきゃいけない。


「委員長今日さ教室で待っていてくれないか?」

「ええ分かったわその時に聞くわね」


時間は過ぎる。勇気も固めた。翔子以外いない教室で話し始める。


「俺さこういう時にちゃんと言えればいいんだけど」

「?何かしら?あっでもエッチなのはだめね」

「いやそういうことじゃなくてさ・・・えっと」

「なんなのよ?はっきり言って頂戴」

「ああもう!はっきり言うぞ!俺と友達として付き合ってください!」

「・・・え?」

「もう一回言うのか?結構恥ずかしいんだぞ?」

「ええと・・・お断りします」

「・・・そっかありがとな・・・じゃあ」

「ああの!そういう意味じゃなくて・・・恋人として付き合って欲しいって意味なのだけど」

「・・・は?」

「恋人として付き合って欲しいって言ったのよ!友人としてじゃなくて!」

「えっとそのなんだ・・・よろしくお願いします」

「こちらこそ・・・」


翔子はへたり込んでしまった。どうにか手を貸してやるとふらふらになりながらも立った。


「大丈夫か?」

「えぇ私ね初恋の相手に告白されたんだもの腰砕けよ」

「それって・・・俺?」

「あなた以外誰がいるのよ一年からずっと好きだったの」

「そうだったのか・・・まったく気づかなかった」

「鈍感ね私がどんな気持ちであなたを目で追っていたか知らないで」

「いやほんとごめん・・・」

「いいのよこれからはこんな事も・・・」


翔子は唇と唇を合わせた。甘く濃厚な時間が流れる。


「できるのよ?よろしくね」

「・・・りょーかい委員長の仰せのままに」

「あら委員長なんて彼女に言うものかしら?心汰」

「はいはい翔子これからずっと」

「えぇ死んでも一緒よずっと」

「「よろしくお願いします」」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やはり、最後は甘くなるのですね。 主人公が良い感じに鈍感ですね。恋愛ものは、やはり主人公の鈍感さも大きなポイントですよね。 [一言] 早速読みましたよ〜(^∇^) テスト絡みのお話でしたか…
2015/07/11 01:55 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ