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学校の死神(改)  作者: 化草野菜子
第三章 重い想い
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9/20

モヤモヤする

 そして放課後……。

 雨花はいつものように教室でラオを待っていた。

 雨花はラオについていくうちに、はっきりと霊の姿を視るのにも次第に慣れてきていた。

 

「おっす!」

 

 ラオはいつも通り死神姿でやって来た。

 彼の話では部活が終わった後の夕方になると、自然と死神の姿に戻るらしい。

 早速二人は悪霊退治に出かける。

 

「ところでさあ」

 

 雨花は廊下を歩きながら口を開いた。

 

「ん?」

 

「ラオっていつもどこに帰ってるの?」

 

「ふふーん、それはなあ……宿直室だ!」

 

 ラオは得意気に答えた。

 雨花はそれを聞いて、今朝の職員室から聞こえてきた会話を思い出した。

 

「えっ! じゃあ、もしかして……」

 

「なに?」

 

「先生たちの冷蔵庫から食べ物盗ったりとか、してる?」

 

「あー、まあな!」

 

 ラオは一瞬ギクッと顔を強張らせたが、お得意の笑顔でニカッと笑って誤魔化した。

 

「うわあ、それって泥棒じゃん……」

 

「……まあまあ、細かいことは気にすんな!」

 

 ラオは少し焦りを見せたが、急に困った表情を浮かべた。

 

「でもなあ、最近オレが盗むせいで、先生たちが冷蔵庫にあんまり食べ物入れんようになってな……白滝先生くらいしかなあ……」

 

「ていうか死神でもお腹減るんだね」

 

 雨花はふと疑問を口にした。

 

「いや、お腹減るっていうか、多分気持ちの問題。死神の姿では腹も減らんし、そもそも物を食べたりとか出来んかったから、食べられるのが嬉しくってなあ」

 

「そうだったんだね……」

 

 雨花は少し可哀想に思ってしんみりとうなずくと、ふと顔を上げてある提案をした。

 

「あ、じゃあ私が、今度からなにか持ってきてあげるよ!」

 

 ラオは驚いて振り返った。

 

「え、いいんか?」

 

「うん、全然!」

 

 雨花は元気にそう答えたが、実はダイエットにもなるかもという、やましい気持ちも少しあったのだ……。

 

「よっしゃ! 本当にありがとな」

 

 そんなことはつゆ知らず、ラオは大喜びだった。




 

 次の日から、雨花はさらに早くに学校へ行くようになった。

 もちろん、ラオに食料の差し入れをするためだ。

 ラオは差し入れを渡す度にすごく喜んでくれた。

 雨花は痩せることより、それが嬉しくてならなかった。




 

 数日後、文化祭の準備中……。

 

「はー! もう作るもんもないし、後は作業するふりしてサボるのみ!」

 

 裏方はだいたいの作業が終わったので、達成感に浸りながら陽太はうんと伸びをした。

 

「ちょっと待って! その前に片付けなきゃ……」

 

 秋美が、使わずに大量に余った新聞紙を返却するために集めていると、ちょうど役者が休憩に入ったようで、ラオがやって来た。

 

「おー、終わったか」

 

 秋美が集めた新聞紙を持ち上げようとすると、ラオがひょいとその新聞紙を持ち上げた。

 

「いいよ、オレが持ってく」

 

「ありがと」

 

 秋美は微笑んで礼を言う。

 ラオに続いて、陽太も残りの道具等の返却物を持ち上げた。

 

「じゃあ、オレも行くよ」

 

 二人は連れ立って片付けに行った。

 そんな二人を見送りながら、不意に秋美がつぶやいた。

 

「ラオって結構いい奴よね……」

 

 他の片付けをしていた雨花は、思わずちらりと秋美の表情を窺った。

 

「そうだよね……!」

 

 千代子は抑えて言ったつもりが、好きなことがバレバレな声色だ。

 

「ねえ、あめちゃん」

 

 そしてまたしても雨花に抱きついてくる。

 

「う、そうだね」

 

 雨花は困り顔で受け答えた。




 

 ラオと陽太が帰ってきた後も、役者の方はラオの出番がまだなようで、彼はしばらく裏方の中に混ざっていた。

 

「あんたって意外と剣道強いよね」

 

「なんだよ意外とって」

 

 秋美はさっきからずっとラオと話している。

 雨花は気づいていたが、この二人はよく話す方だ。

 千代子は羨ましそうに、ちらちらと二人を見ている。

 雨花はなんとなく苛々してきた。

 

「私、背景描いてる人たち見てくるね!」

 

 たまりかねたのか、千代子はそう言って立ち上がると、雨花の頭をポンと叩いて技術室へ行ってしまった。

 陽太と早野も背景の方へ行っており、さっきからずっと姿がない。

 

「ちょっとトイレ行ってくる」

 

 話が一段落したようで、ついに秋美まで立ち上がって行ってしまった。

 雨花とラオは、なんとなく二人になってしまった。

 しかし雨花は、押し黙って会話しようとはしなかった。

 

「お前なにムスッとしてんだよ」

 

 ラオがそんな彼女に茶化すような口調で声をかけたとき、ガラッと教室のドアが開いた。

 

「おい、猫耳ないか?」

 

 雨花が少し気にしていた、種沢が教室に入ってきた。

 雨花は驚いて目を泳がせる。

 

「さあな、お前らに渡したと思うけど?」

 

「そっか」

 

 ラオの返答を聞いて、種沢はあっさり教室から出て行ってしまった。

 しかし、雨花がふと見回すと誰の仕業か、ロッカーに猫耳が入っていた。

 ちなみにフェルト生地で仕上がっている。

 

「あ、あった!」

 

 雨花は思わず声を上げて、ラオがなにか言う前に、猫耳を引っ掴んで種沢の後を追った。

 

「待って!」

 

 雨花は勇気を振り絞って、廊下にいた種沢を呼び止めた。

 

「え?」

 

 種沢が振り返る。

 

「あ、えっと、猫耳あったよ!」

 

 雨花はぎこちなく、猫耳をずいっと差し出した。

 

「お、どーもッス!」

 

 種沢はニコッと笑って受け取ると、持ち場へ向かって歩き出す。

 が、ちょうどトイレから帰ってきた秋美とばったり出会って、また二人で楽しそうに話し込んでいる……。

 雨花はすぐに目を背けると、教室に戻ろうと向きを変えた。

 

「うわっ!」

 

 いつの間にか真後ろにラオが立っていて、雨花は驚いて飛び退いた。

 

「な、なに?」

 

 雨花は顔をしかめる。

 

「お前、種沢のこと好きなんか?」

 

「えっ」

 

 思わず赤くなってしまった雨花を見て、ラオはニヤニヤと笑った。

 

「やっぱりなー」

 

「なに? 関係ないじゃん!」

 

 雨花は苛々して声を荒げ、ラオを睨みつけた。

 ラオがなにか言おうと口を開きかけたのも構わず、雨花はとげとげしい口調で言い放った。

 

「ラオだって秋美と仲良いくせに!」

 

 自分の目頭が熱くなっているのに気づき、雨花は慌てて彼に背を向けた。

 

「もう、意味わかんない!」

 

 雨花はそう吐き捨てて、ラオから逃げるようにその場から走り去った。

 

「お、おい! 根岸!」

 

 ラオは茫然と雨花の後ろ姿を見送った。

 

(なに……あいつ……)

 









  

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