67.大団円(1)
こうしてプロキオンはその夜見事、選び抜かれた七曲の歌を最後まで演じきった――。
「見事な演技、ありがとうございました!」
それはまさに、精霊祭の掉尾を飾るにまこと相応しい出来栄えというやつで。
「ブラボー!」
「ああ、良かった!」
「もう終わっちゃったの?!」
「また見たいなあ」
当然ながら終演後グループが姿消しても、いまだ会場には余韻に浸りきった客たちの感動で満ちたざわめきが、止むことなくずっと流れ続けている……。
「いやあ、実に良かった。感動したよ!」
「うん。みんな凄かったよ!」
そしてここはステージの裏、演者用テントの中。ファレル夫妻が拍手しながら感激の声上げたように、既に他のグループやその関係者は去り、今は俺たちプロキオンに関わる者たちがいるだけだ。すなわち、メンバーと、その成長間近でずっと、熱心に見守ってきた四人が。
「今日はいい酒が飲めそうだ!」
特に当然というか中でもスコットとジェシカの喜びようには、ほとんど我が事のようなものがあり。
「もう父さん、はしゃぎすぎ!」
それ見たメイルなどは呆れた声、たまらず零している。
「はは、いいじゃないか、今晩くらいは!」
「でもそんな、すぐお酒だなんて……」
「あらメイル、こういう時こそお祝いしないでどうするの?」
何よりもはや精霊祭でのプロキオン優勝間違いないと、ほとんど確信しているらしいそのひたすら歓喜一辺倒の様相見れば。
「だから、まだ優勝は決まったわけじゃ――」
それゆえ娘の方はそんな空気の中、自分だけは絶対に気を緩めまいとそう二人嗜める言葉、告げていたものの……。
「何、ここまで来たら勝利は確実だ。何せ、あのお客さんたちの喜んだ顔見たら!」
「ええ、本当。素晴らしい舞台だったものの!」
しかし一方親たちはまるでそれに構わず、ついにはそんな大言まで勢い、返していたのである。
「まったく……」
途端メイルに、やれやれと小さなため息、吐かせながら。
ちなみに夜の部の公演はコンテスト方式になっていて、その結果は今夜、つまりこれから発表されることとなっていた。もちろん審査するのは腕利きのダンサーや歌手など、芸術家ギルド所属の煌びやかな一流アーティストたち。そう、彼ら彼女らが熱の入った討議の後、優勝者を決めるのである。しかもこのコンテストの副賞としては、何と王都ロンキュウムの大劇場で演技できる資格、というもの凄いものがついていて。
「ああ、でもこれで王都へ行けたらな」
まさしくスコットをしてそう呟かせたくらい、それは実に豪華な、豪華なやつに違いなく……。
「あの、すいません」
――と、そうしてファレル一家中心にどこまでも和やかな空気が流れた、その時だった。
「え?」
「プロキオンの皆様に、お会いしたいとご家族やご友人の方たちが来られているのですが」
「あ、はい!」
ふいに入口から一人の女性が入って来て、丁寧な口調でそう告げてきたのだ。
「そうか、みんなの」
「招待していたんだっけ」
すなわちその人は精霊祭の受付役に違いなく。もちろんメンバーのために、ゆかりのある人々従えてきたはずの。
「では、よろしいですね?」
「あ、もちろんどうぞ」
そうして受付係は俺たちが二つ返事でその言葉受け入れること示すや、ただちに背後、入口の外を向いて頷きつつ手招きのようなことをし、
「皆さん、お入りください」
――次には、そんな一言誰かへ向かって告げていたのだった。




