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64.解放

『みんな、また会おうね!』

『子犬のサーカスは、ずっとみんなの思い出の中にあるから!』

『うん。忘れない限り、絶対』

『そしてラストライブ、とても楽しかったよ!』

『本当、今日が今までで最高のライブだった――』


                  ◇


 捕まってから既に六つの夜が無益にただ過ぎて行き、かくてこちらの時間間隔も大分頼りないものとなってきた、――そんなある日のこと。


「おい、起きろ」


 ふいに掛けられたその声に、俺は布団にくるまりそれまで見ていた夢を妨げられていた。


「……え?」

「あんたに話がある」

「話……?」


 むろん目覚めたばかりの俺は、ぼんやりとした頭のままだ。特についさっきまで繰り広げられていたあの懐かしい光景が、いまだずっと脳裡に色濃く残っていた以上は。


(あれは子犬のサーカスの、ラストライブ……)


 それゆえ目の前の男の声に反応すると同時に、夢のことも合わせて束の間考えていたものの。


「おい、しっかりしろ。大事な話なんだ」


 ……しかし続けての男の強めの叱咤が、途端俺をしてようやくはっきり、目覚めさせていたのだった。


「! う、うん」

「先ほど、赤の旅人の一員が市内で発見された。何でも猫が見つけ出し、警吏にわざわざ知らせてくれたそうで、まったく妙なこともあるものだ」

「へえ、なるほど……て、え!」


 そうして明瞭さを増し始めた意識のもと、男――やはり青い制服着た、警吏の一人と思われる――の話はさらに続いたのだが、――しかしふいに聞いたその内容は、どう考えても余りに衝撃的としか言いようがなく。


「じゃあ、そいつ捕まったのか?!」


 むろん覚醒した俺の声音にもたちまち驚愕の響きが籠められていたのである。


「ああ、もちろん見事ひっ捕らえることに成功した。それもあんたにそっくりなグラスランナーの男をな。……だから、ここまで言えばもう分かるだろう?」


 しかも男が加えてそんな言葉、冷静に放ってきたとすれば。俺の顔、しっかりと見つめながら。


「あ、じゃあ俺は……」

「ああ、言うまでもなく無罪で、釈放だ」

「そ、そうか」


 ――すなわち、どうやらあの猫状態の孫娘、ちゃんと有言実行で恩返しの仕事果たしてくれたらしい。つまりは件の盗賊団のメンバー、探し出すという。


「良かった……」


 従って次の瞬間俺が知らずほっと安堵の息吐いていたとしても、それは様々な状況からしてさも当然過ぎること――。


「悪かったな、疑って。さあ、では家に帰ってくれ。外ではあんたの知り合いの娘が待っているぞ」

「メイルが……!」


 特に加えて男が穏やかにそう告げてくると、途端心の中に温かいものまでこみ上げてきて。何よりあの少女の太陽の如き明るい笑顔、まじまじと思い出し。

 いつでも俺を、いやみんなを分け隔てなく、どこまでも元気づけてくれる。


「まあ一週間とはいえ、大分嫌な目に遭わせてしまったからな。我々からも後で正式に謝罪させてもらおう」

「は、はあ」

(あれ、でも今、一体何時頃だ? 精霊祭は?)


 ……そしてそのためだろう。それなりに平静な心取り戻してきたということなのか、次には俺は対する男の声ほとんど頭に入ってこないまま、ハッとそんな大事なこと、妙に薄暗い牢屋の中突然考えついてもおり。

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