48.ボーガン(2)
そこに大挙して現れたのは、言うまでもなくオークの集団だった。それまで陰険にも周囲の建物の中でこちらの様子じっと窺っていたのだろう、総勢10人以上はいたかもしれない。しかもそんなただでさえ凶悪な形相の連中が、その手にそれぞれ例外なく鋭利な刃物持っているのだ。
「きゃあ!」
それゆえそれ見たアリーシャが途端分かりやすくも悲鳴上げたのは当然、というか必然のことでしかないのだった。
「な、何だお前ら!」
「そりゃこっちの台詞だ。ボスの家に許可もなく来やがって」
「まあ、でもいるのはガキばっかりみてえだがな」
そしてユリアーデの反応を受けたちまち始まったのは、その集団での俺たちへの包囲。つまりはネズミ一匹逃がさない、まさに問答無用、鉄壁の布陣というやつで。
「く……」
当然ながら門を背にしたこちらとしては、どうにも動きようがない。ただただ相手の無遠慮な視線にさらされるだけだ。
そう、現出したのはまさしく絶体絶命、袋叩きにされても何らおかしくない極めて危険な状況――。
「ま、待ってくれ、俺たちはただあんたたちのボスと話し合いを……」
ゆえに俺は自分以外全員女の子ということもあり、何とか暴力沙汰だけは止めようと相手へ話しかけたものの。
「へ、知るかそんなもん。どうせボスは何も知らないんだろ?」
「まあ、ガキの方は少々手加減してやるが、お前に関しては容赦しないぜ!」
しかしオークたちはまるで聞く耳持つ気配なく、さらに得物手にじりじり近寄ってくる。それも眼光さらにギラリと鋭く、凶悪にさせて。
「わ、まずい……」
「どうするの?」
よってその様見たメイルとアリーシャは知らず恐怖の呟き零している。もちろん周囲には誰一人助けてくれそうな者もない以上。
すなわちこうしていよいよ、奴らの包囲網はもはやどこにも逃げ場がない程狭まってきており、
(鴉もここにはいないのか……)
辺りを見回した俺としても、うまい手立ては何一つ浮かばず、
(どうする、謝ってもどうにもならないぞ、これは――)
ただ、焦慮の気持ちばかりが、心の中をやりたい放題支配していく……。
「皆さん、思いきり耳を塞いでください!」
――だが、そんな今にもゴロツキたちに襲いかかられようとする、その時だった。
「え?」
「ユージンさん?」
「早く、今すぐ!」
それまで青い顔して状況見守っていたユージンが、突如として出会ってから最大ともいえる大声、放っていたのだ。
「耳を?」
「はい、急いで!」
しかもその声音にはいかにも切迫したものがある。従って俺がすぐさまそれ以上理由を聞くことをやめたのはまさに必然の選択だった。
「みんな、ユージンさんの言うことを聞いて!」
その代わりに、そう声も強く皆へ号令かけて。
「わ、分かった」
「うん!」
それゆえすばやくその謎めいた命に従い、両手で耳を押さえた――リップルは耳が大きいゆえ折り畳むようにして――ホーリー救出隊。当然外界の音を全てシャットアウトするような状態である。つまりはかなりの大声も小さなものとなる……。
「あ?」
「何してんだ、こいつら?」
むろん当然ながらオークたちはそれ見て、これ以上ないほど怪訝な表情示したものの。
「ん? 何だこの女?」
――しかし、その瞬間。
救出隊の一番前にスッと一人立った、青白い肌したバンシーのユージンが、突然思いきり肺腑の中へと息を吸いこんでいったのだった。
「!」
何より瞬間、その灰色の眼の光を、怪しいばかりにまばゆく輝かせながら――。




