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40.デビュー(3)

・一曲目 『聖ラウダの歌』

「ほお、これが!」

「へえ、可愛いじゃないか!」

「でも、アマランスに比べるとみんな子供みたいだな」


 横一列に並んだ、向かって左からアリーシャ、ユリアーデ、キルデア、リップル、ホーリーの『プロキオン』。

 途端場に溢れ出した、観衆たちの陽気で驚きに満ちたざわめき。間違いなくそれは何ヶ月かぶりに白羊亭を包みこんだ、実に色鮮やかな賑わいというやつだった。


「静かに、始まるぞ!」


 そう、はたして何より、人々が今日のステージにおいて宣伝通りあのアマランスに負けず劣らずの演技熱望しているのは、疑いない以上。


「さあ、行くぞ!」


 それゆえピオトの合図のもと、たちまち最初の曲、『聖ラウダの歌』が賑々しく始まるや、場内は一斉に真剣な静けさで覆われ尽くしたのだが――。



 マルクムのラウダは今日も聖なる本手にして

 衆生に偉大な御教え悟らせようと大忙し

 時には東の果てのバリーへ

 また時には西の端のエルドンへ

 とにかく道が続く限り

 その四本の足が止まることはない――



 それはエドラが付けた振付によれば、聖なる馬ラウダを表現する、軽快なステップを特徴としたあくまで初歩的なダンス。むろんとにかくスピード感が重視され、皆は胸の前で腕を×字に組み、ステージ上を所狭しと動き回る。さらには時にフォーメーションを色とりどり変化させたり、ジャンプを入れたりして、客の目を飽きさせない仕掛けもふんだんにとりこんだ楽しげな舞だ。


(よし、いいぞ。揃っている)


 むろん少女たちは、かなりの精度でそれをこなしていき。


「いいぞ、かわいいじゃないか!」

「あら、素敵ねえ」


 合わせて感嘆の声もあちこちから次々零れている。



 マルクムのラウダはボロボロの袈裟を着て

 都市の門を潜れば

 たちまち人々の大いなる歓迎を受け……



 そして演技のもう一つの大事な要素、歌のパートにおいては、やはりもっとも主力となったのがキルデア。彼女の朗々たる、だが同時に可憐極めた歌声はユージンも驚いた通り、たちまちにして聴衆を虜にし、


「へえ、上手いな、あの子」

「セイレーンなのか……」


 知らずそれ耳にした人々に、溜息にも似た感想、洩らさせていたのだった。


 そうして白羊亭の主役となったかの如く、軽やかに舞い、美しく歌うプロキオン。

 特に俺から見ても、目立ったミスのようなものはなく。


 すなわちダンス、歌ともに上々の出来栄えで、プロキオン最初の一曲は間違いなく成功したと言え、


(うん、これなら――)


 ――当然ながら袖から熱心に見守っていた俺も、我知らず会心の笑み、零していたはずなのである。


「お見事!」

「良かったよ!」


 かくて次第に高まって来た、観衆の喝采の中。


・二曲目 『ゴブリンの城』

 次いで二曲目は『ゴブリンの城』。全体的に聖ラウダの歌よりはややゆっくりめの曲調だ。また、その振り付けも前曲とは大分異なっている。つまりそれは一人を中心として、残りのメンバーが二人ずつペアを組み、その周囲を軽やかに舞い踊る、というもの。むろんメインの歌い手を、真ん中の娘がしっかりと務めながら。



 ギョアン・シピロの山中深きにある

 それはそれはおどろおどろしい城

 そのただ中には

 近隣よりさらったか弱き子供たち

 哀れ星の数ほど閉じこめて



 そしてまたその歌われる内容も、徐々に滑稽を極めてゆくよく練られた歌詞となっており、


「ははは、ゴブリンの城か!」

「最近よく聴く歌ね」


 当然キルデアの美しくかつひょうきんな歌声とも相まって、観衆はすぐさま喜色示さざるを得なかったのだった。


「おお、見事!」


 だがそうした中、ではこの曲目の最大の魅力が何かと問われれば、それはむろんリップルとアリーシャ、ユリアーデとホーリーの各コンビが繰り広げる軽やかなダンスとしか答えようがなく、


 二人揃っての息の合ったターン、交互に大きくタイミング良くジャンプ、そして軽妙なステップによるステージ移動――。


 すなわちそれぞれのペアがリップル、ユリアーデというダンス巧者にぐいぐい引っ張られていたこともあり、実に見応えのある出来を誇っていたのだから。


(よし、アリーシャもホーリーもいいぞ!)


 そう、はたしてそれくらい、ゴブリンの城の完成度は練習そのまま、素晴らしいまでのレベルで。

 はっきりと申し分ない、そう言わなければならなかったほどの。



 ……いずれにせよ、かくて煌びやかな歓声と賑わいの内に、二つの曲は無事何ごともなく終わり、


「では、続いて――」


 はたしてそのすぐ直後、休みもなくついに本日三番目にして真打ちたる一曲、『ジョシュ・アルルカン』が始まったのだった。

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