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24.ホーリー

 こうして面接は一応つつがなく(?)進み、ついに最後の応募者を迎え入れる段となった。もちろんいくら事前に一人15分以内と決めていたとはいえ、それが休憩なく既に四人分だ。俺の疲労感もかなりのものなのは必然のこと。何より、これは本当に、心から真剣に取り組まなければならない仕事だったのだから。


「じゃあ次の人、入って」


 それゆえ俺は何とか集中力途切れさすまいと頬をパンッと一回両手で叩き、いよいよ最後の業務に臨まんと気合入れる。むろん何となくグループのビジョンが見えつつある以上、ここで力抜くわけにはいかない。ましてや後一人、――当然、自らを叱咤する気持ちも強くなってゆき。


「あ、はい……」


 そうして一つ息を吐くや、やっと扉の外に控える最終応募者、万全の態勢で呼び入れたのだが。


(ん……?)

「お願い、します……」


 ……しかしなぜか次の瞬間。締めくくりとばかりに部屋へ入って来たその少女の持つ稀有な雰囲気に、俺は知らず驚き示すこととなったのだった。


「ああ。えっと、まず自己紹介を」

「……ホ、ホーリーです」

「なるほど、ホーリーさん。よろしく」


 そう、満を持してというか、ついに目の前に座った五人目のアイドル志望者は、だが案に相違して今までの子たちとはあまりに違い、スカートがふわりとふくらんだ小豆色ワンピース身に着けた小さな身体ともども、大層頼りなげな様相纏っており。


「よ、よろしく、お願いします……」


 しかもその身長に合わせたかのように、声も実にか細かったのである。

 もちろんこれには一瞬戸惑ってしまうも、とはいえそんな微妙に感じた驚きおくびにも出すわけにはいかない。従ってやや間を置いてから、俺は何とか平静に対応していた。


「ああ、どうも。――じゃあこれから面接を始めるけど、そんなに固くならなくてもいいよ」

「は、はい」


 まあ、そう言われてすぐ立ち直る者の方がむしろ少ないのだろうが、それでも一応多少の助けにはなると思って。



「なるほど、君ってドワーフ族なのか」


 そうしてようやく始まった、五人目の面接。俺は渡された書類に目を落とすと、早速気になるポイント見つけていた。


「はい。お父さんは鍛冶屋をしていて、お母さんも一緒にお店を経営しています」

「ふうん、でもドワーフの女の子って、こんなに……」

「え?」

「あ、いや、何でもない。独り言だよ」


 と、そこで思わず変なことを言いかけてしまったので、寸前で何とかとどめる。もちろんそれ見た相手はキョトンとした顔だ。


(危ない危ない。思わずこんなに可愛いのか、なんて言っちまうところだった)


 一方俺は俺で、妙な展開にならなかったことにそっと胸撫で下ろしていたものの。


(しかし、それにしても)


 ――とはいえそんな感想知らず抱いてしまったのも、状況考えれば仕方のないこととしか言いようがない。つまりはそれくらい、目の前の女の子はドワーフという言葉とは結び付かないほど、まるでお人形さんのようなかわいらしさ持っていたのだから。

 ホーリー・レンドン。

 薄紫色の、背中まで届く長い髪に、濃いまつげと垂れ下がり気味でつぶらな橙色の瞳。そして丸顔の中小ぶりな鼻、口、ぷっくりした頬がどこまでも可憐な、まだあどけなさすら残す少女。しかも全体的に、どこかほんわかとした穏やかな空気も漂わせた……。



「あの、何か?」


 そしてそんな容姿に見惚れていたゆえだろう、俺が思わずボウっとしていると、不安になったらしいホーリーは大きな瞳をしばたたかせるのだった。


「と、失礼。ちょっと考え事をしてしまって。それじゃ、改めて始めよう」

「はい」

「では最初に聞くけど、オーディションに受かってレッスンが始まった場合、君は毎日ここへ来られるかい?」


 もちろんそれに対して俺が慌てながらごまかしていたのは、論を待つまでもなく。


「あ、そうですね。多分親は許してくれると思います」

「家のことで何か支障は?」

「それが長すぎるともちろん困りますけど」


 かくて話題は半ば強引に元へと戻っている。言うまでもなく、やっと面接の本筋へ。むろんそれはプロデューサーとしての責任感がもたらしたものだ。


「ふむ、まあ一ヶ月くらいかな?」

「ああ、それくらいなら」


 すると相手の方も、ようやく落ち着き取り戻してきたようで。


「それで、君にダンスや歌の経験は?」


 はたして次いで、それ見た俺は話をより本格的な内容に移していったのだが。


「あ……そ、それが、実は」


 だが、すると途端ドワーフ少女はなぜかふいに表情暗くさせてしまう。


「うう……」


 しかも、さも言いにくそうにして。


「? 何だい、言ってごらん」

「えっと、そのどっちも、私は苦手、というか、そもそも経験自体がまったくなくて……」

「な、なるほど」


 特にそのしょげ返りぶりは、こっちがかえって当惑するくらいだったものの。


「まあでも、君には――」

「で、でも、お客さんの前で歌ったり踊ったりしたいという気持ちは、誰にも負けないはずなんです!」


 ……それでも俺がなだめの言葉掛けようとするや、それ遮りようやく力振り絞って何とか言った一言、そこにはまさに溢れんばかり、相当な覚悟が認められ、

 

「!」


 何より俺は刹那その橙色の瞳に、ただならぬ力強い輝き、少しだけ垣間見ることとなったのである。

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