22.リップル
次いで部屋に入って来た女の子に、俺は知らず一瞬目を丸くしてしまった。
「リップルといいます。よろしくお願いします!」
そう、アリーシャよりもさらに元気よく現れた青く襟の高い、中華ドレス風衣装纏った少女の頭には、獣の、それも分かり易くも猫耳がにゅっとはっきり生えていたのだ。しかもその肩まである髪の色は、かなり派手な桃色で。
「あ、ああ。よろしく」
「へえ、グラスランナーの方が、プロデューサーなんですね!」
「そうだけど……やっぱり珍しいかな?」
むろん俺はその姿および勢いに知らず気圧されてしまう。それくらい、まさにグイグイとくる感じだったのだ、ナチュラルに。それゆえ刹那、面接中とは思われぬ妙な間がポカンと空くこととなったものの、
「はい! グラスランナーってどちらかというと自分で踊ったり歌ったりするのが好きな人たちだから」
だが相手はそれをまるで気にした風もなく、さらに立て続けに喋ってくる様相なのだった。悪戯っぽく大きなエメラルド・アイを可愛らしい丸顔の中、ピカピカ眩しく輝かせながら。
「まあそうだね。それで、君も同じなのかい?」
「え、僕? もちろん! 昔からとにかく踊るのが大好きなんです!」
「なるほど、それで今回のオーディションに」
そうして俺がそのいかにも楽しいといった言葉に問い返すや、相手――ワーキャットのリップルはとりわけ関心ありげな表情示してきたのである。
「あ、それで一つ質問なんですが」
「え?」
「そのオーディションに合格したとして、いつ頃から活動できるんですか?」
むろん確かにそれは気にして当然の疑問ではあった。何せ、アイドルグループ作るという大まかな発表をしただけで、俺からはまだそれ以上の明確なビジョン何一つ明かしていなかったのだから。
「うん」
ゆえにつかの間言葉選んでから、
「もちろんデビューを目指すけど、その前にまず色々レッスンを受けてもらうことになるよ。つまりは本物の演者となるために。だからすぐ人前で歌うという訳には――」
俺はどこか慎重に答えていた。
「あ、そうか、そうですよね! 確かに僕、歌にはそんな自信ないから」
「でも、レッスンはそこまで長くならないはずだよ。腕利きの先生も雇っているし」
「へえ、凄いなあ。絶対に受かりたいな」
対するリップルは相当合格願望が強かったようだが。
「――えっと、それで、弟さんが一人いるんだね」
「はい、裏町で一緒に住んでいて。そして親はもういないので、唯一の家族です」
「じゃあ君が選ばれたと知ると、彼も喜んでくれるかな?」
そしてそんなやる気十分のワーキャットへ、手元の資料見てからちょっと気になること一つ訊ねると、
「もちろんです! それにカレルは特に身体が弱いから、僕が稼げるようになれば、凄く助かるんです!」
――加えて返ってきたのは、そうした何とも実に健気な一言なのだった。




