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間章 ①

「あ、何か猫に書いてある!」

「え?」

「本当だ、これ文字じゃないか?」


 昼下がり父親から作業用のお使いを頼まれ、財布片手に市場目指していたホーリーがその声を聞いたのは、まさしくほんの偶然のことだった。すなわち本来真面目で与えられた仕事ちゃんとこなそうとする少女にとってその役目以外のことは余計なことであり、かように道の途中でふと足を止めてしまうこと自体がまずあり得なかったのだ。


(え、猫に?)


 だがその時は、特に大好きな猫に関してのことだったためか、彼女は好奇心に負け思わず続けてちらりとそちらの方まで窺ってしまい――。


「へへ、何だこれ? オーディションだって!」

「へえ、もうすぐじゃん」

「お前行ってみるか? 何かくれるかもしれないぞ!」


 そしてそこ、通りの片隅、花屋の前で三人の男の子が一匹の猫囲みわいわい騒いでいるところをしかと目撃したのである。


(オーディションって、何だろう?)


 むろん、最初はどちらかというと猫の方に興味があったのだが、しかし遠巻きに話を聞いているうちに、次第にどうにもその書かれた内容自体が気になってくる。


「いや、でもこれ女の子限定みたいだぜ」

「まじかよ、ちぇっ、じゃあ関係ないや!」

「もう行こう、バムが待っているはずだから」


 しかも彼らが何とも気を引く言葉、零していた以上は。


(女の子……?)


 そう、それはまさしく自分に当てはまると考えられた条件で。しかもオーディションなる、不思議と印象に残るキーワードも付いており。つまりこんな自分には、本来余りに縁遠いはずの。


(何だろう)


 そしてそのためだろう、ふいに湧き出した胸高まるような気持ちを抑えることなど今はとてもできず、


(どこでやるのかな?)


 何より少年たちが立ち去った後、その猫が自分の名前を呼んだような、形容し難い奇妙な感覚もあって。


「ニャアオ」

「あ、待って!」


 かくてそこにいる白黒斑猫が大あくびした後ふと向こうへ歩き出そうとしたのを見るや、ホーリーは慌ててそんな声発していたのだ。


「ニャ?」


 はたして野良猫はそんな少女が急ぎ近づいていくと一瞬驚いた様相見せるも、


「お願い、あなたの身体に何が書かれているのか、ちょっとだけ見せてね」


 加えてドワーフ少女がいかにも優しく話しかけると、たちまち大人しくその言うことを聞いてくれる体勢となる。重度の猫好きというのが見事伝わったのか、どうやらあっさり気を許してくれたようだ。


「ありがとう、お礼できないのが残念だけど」


 もちろん傍に来たホーリーに手慣れた様子で頭撫でてもらいつつ。

 そうして一方間近に寄った少女には、やっと横腹の文字詳しく見られるようになって。

 水色の染料で書かれた、少し長めの文章を。

 パッと見あまり上手な文字とは言えなかったが。


「えっと、何て書いてあるんだろう?」


 そしていずれにせよそう呟きつつ、もっとよく確かめてみようと、ホーリーは花屋の前でしゃがみこみ。

 相変わらずじっと静かなままの猫に、ちらちら時おり視線だけ向けられながら。

 すなわちそこにあったのは、どこまでも目を引いて仕方ない、ある一つの興味深い内容で――。

 

「え、歌と踊りの、グループ……?」


 そう、途端ホーリーのそのつぶらな瞳を、眩しい光で一際輝き出させたような。

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