プロローグ
次々と沸き起こる歓声、止め処のない拍手、弾けるような熱気――。
俺はその瞬間、まさしく興奮の坩堝の真っ只中に紛れこんでいた。
春の終わりを告げるような、いまだ冷ややかさも混じった夜の空気の中。
遥か上には輝ける無数の星々。中でも極上のパンケーキのようなまん丸い月がやたら目立って美しい。とにかく朝からずっと続く、祭りの日には実にふさわしい、雲一つない綺麗な夜空というやつだ。
……そう、はたしてそれはまるで、下界で今まさに行われているひと時の宴に惜しみなく天空から彩りを添えてくれていたかのようで。
すなわち、今宵の正真正銘疑いなき主役となった、楽士たちの演奏のもと舞台で舞い踊る五人の少女たち――黄、赤、白、緑、青の五色の実に目に鮮やかな衣装纏った――の何とも言えぬ煌びやかな艶姿に。
(凄い……)
そしてそれゆえだろう、観客席側にいる俺の口からはおのずと感動と興奮の溜め息が刹那大きく洩れてもいる。これまでに積み重なった膨大な疲労も、瞬間どこかへきれいさっぱり消し飛んだように。要はそうさせるくらいあのステージ上の五人のコンビネーションは最高で、かつ完璧・見事過ぎたのだから。
心の底から驚きの念さえ、溢れてきたくらい。
(こんなにも、上達するなんて)
かくて会場を埋め尽くした喝采の中、妙なる歌声は響き、可憐な舞は顕わされ。
むろん、もう誰に対しても、その素晴らしさを微塵も隠すことなく……。
まさしくこれこそがあの会場と演者の一体となった瞬間、というやつに違いないはずなのだった。
(これなら、間違いなく――)
そうしてその余りに得がたき時間は、俺の脳裡に刹那ある大きな確信を天啓のようにもたらしてきて――。
それは歓喜か、あるいは希望か、いずれにしてもたちまち俺の胸の中は温かいもので溢れんほど一杯となり。
すなわち、自然と流れて来た涙、頬を伝う雫を拭うこともなく。
「ここは、君たちのステージだ!」
――その場で一人、いや、周囲の観客たちとまさしく一丸となって、知らず勝どきにも似た大声、俺は上げていたのである。




