【55話】フォローのつもりが……
「大丈夫ですか!?」
「う、うん……」
心配そうに俺の顔を見上げてくる瑠奈ちゃんへ、なんとか苦笑いを返す。
正直言うとぜんぜん大丈夫ではないのだが、それよりも今はやることがあった。
「いいかい瑠奈ちゃん。よく聞いてくれ。俺は三股なんかしていない。舞が勝手にそう言っているだけだ。絶対に信じちゃダメだからね」
「やっぱりそうですよね! お兄さんはそんなことする人じゃないですよね!」
ホッと息を吐いた瑠奈ちゃんは、安堵の顔を見せた。
緊張していた雰囲気が元に戻っていく。
親友の兄が三股するようなとんでもないクズじゃないと分かって、安心しているんだろう。
そして安心しているのは、俺も同じ。
とんでもない濡れ衣を着せられるところだったが、無事に疑いを晴らすことができた。
あぶねぇ……変な勘違いをされるところだった。
こっちの件に関しては、舞に注意しておく必要があるな。
「あの、でもですよ! もし仮に舞ちゃんの言葉が本当だったとしても、私はお兄さんのことを――って!」
途中で言葉を切った瑠奈ちゃんの頬が、急に赤くなった。
なに言ってるの私! 、と一人で口にして、あわあわと大慌てしている。
よく分からないが、瑠奈ちゃんはなにやらミスをしたらしい。
ここは別の話題に持っていって、空気を変えたほうがよさそうだ。
「瑠奈ちゃんが作ってくれたご飯、とってもおいしかったよ!」
泊めてくれるお礼ということで、今日の夕食は瑠奈ちゃんが手料理を振る舞ってくれた。
クオリティーはかなり高く、その腕前は舞に匹敵するくらいのハイレベル。
俺も舞も、大絶賛しながら食べていた。
「顔もかわいいし性格も良いし、それにおいしい料理だって作れる! 瑠奈ちゃんと結婚する男は幸せだろうなぁ。羨ましいよ」
「あわわわわわ!?」
フォローしようとしたのだが、あれれ。
瑠奈ちゃんはますますテンパるし、頬の赤色も濃くなってしまう。
つまりどこからどう見ても、失敗していた。
「ごめんなさい! 失礼します!!」
バッとお辞儀して、瑠奈ちゃんは俺に背を向ける。
逃げるようにリビングから飛び出していってしまった。
一人取り残されてしまった俺は天井を見上げ、ため息を吐く。
思ったことを素直に伝えてみたのだが、言い方がマズかったのだろう。
たぶんあれは、ドン引きしていた。
もう少し考えてから発言すべきだったと、今更ながらに反省する。
「これが原因で嫌われないといいんだけど……」
せっかく仲良くなれたのに、また最初の頃みたく距離を置かれるのは悲しい。
どうかそうなりませんように、と願いながら、俺はコーラをグビっと飲んだ。
瑠奈がこうなっている理由は次話にて判明します。




