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【54話】夜中に飲むコーラはうまい


「夜中に飲むコーラは格別にうまいな!」


 コーラはいついかなる時でもおいしいが、夜中に飲むのが特においしいと思う。

 ちょっぴり大人の雰囲気が入ることで、それがイイ感じのスパイスとなり最高の味わいになる。

 

 ……というのが、俺個人の感想だ。


 そんな午前一時すぎ。

 俺は一人、リビングで最高のコーラを味わっていた。

 

「うん?」

 

 階段の方から物音が聞こえてきた。

 

 耳を澄ましてみると、足音だ。

 誰かが階段を下りてくる。

 

 この家には今、三人の人間がいる。

 俺と舞、そして急遽泊まることになった瑠奈ちゃんだ。

 

 つまり今階段を下りているのは、舞か瑠奈ちゃんのどちらかということになる。

 

 瑠奈ちゃんが夜中に出歩くってのはイメージできないし、舞か?

 でもあいつも、そんなことしないしな。

 

 答えが出ないままにコーラを飲んでいると、足音は階段を下り終えていた。

 そしてそれは、こっちへと近づいてくる。

 

 リビングのドアが開いた。

 

「お、お兄さん!?」

 

 入ってきたのは、瑠奈ちゃんの方だった。

 先客がいると思わなかったのか、俺を見て目を丸くしている。

 

「こんな夜中にどうしたの? もしかして、舞の寝言がうるさくて眠れないとか?」


 冗談めかして言ってみると、瑠奈ちゃんは小さく吹き出した。

 笑顔のままに、俺の近くに寄ってくる。


「違いますよ。ちょっと喉が渇いてしまったんです」

「なんだ、そういうことか。麦茶とコーラがあるけど、どっちにする?」

「えっと……私もお兄さんと同じものをお願いします」

「おっけー」


 冷蔵庫を開けた俺は、キンキンに冷えたコーラのペットボトルを取り出した。

 どうぞ、と瑠奈ちゃんへ差し出す。

 

 丁寧にお辞儀をしてからペットボトルを受け取った瑠奈ちゃんは、ゆっくりとフタを開けた。

 両手でそれを持って口に近づけると、一口分だけ飲んだ。

 

 一気飲みしないのか……。

 

 ついガッカリしてしまうがすぐに、いやいや違うだろ、となる。

 そう、一口だけ飲むのは別に普通のことだ。


 かつて俺の目の前でコーラを一気飲みしてみせたあの人――雨宮さんは、人類の神秘。イレギュラー中のイレギュラー。

 普通の人間である瑠奈ちゃんと比べてはいけない。


 雨宮さんのせいで、すっかり感覚が麻痺していた。

 今後は気をつけないと。

 

「今日は泊めていただいてありがとうございます。困っていたので本当に助かりました」

「別にいいって。気にしないで」

「お兄さんは相変わらず優しい人ですね」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、褒めたってなにも出ないよ」


 瑠奈ちゃんと顔を見合わせて、小さく笑い合う。

 このとき俺は、心地よさのようなものを感じていた。

 

 こんなことを言ったら失礼かもだが、瑠奈ちゃんとは結構似ている点が多いと思う。

 

 どこがっていうと、そりゃあもちろん整った外見に決まってるだろ! ……っていうのは嘘です、はい。

 陰キャの癖に調子に乗ってごめんなさい。

 

 似ていると思うのは、雰囲気や性格。

 そういった、目には見えない部分だ。

 

 おかげで話しやすいし、今みたく楽しい気分にもなれる。

 瑠奈ちゃんにどう思われているかは分からないけど、ともかく俺はそうだった。

 

「でも今のは、社交辞令じゃありませんよ。舞ちゃんが自慢したくなる気持ちも分かります」

「あいつってば、そんなことしてるのか……」

「はい。いつも楽しそうに、お兄さんのことばかり話してますよ」

「…………。それはなんというか……恥ずかしいな」

「ふふふ、お兄さんらしい反応ですね」

「もう、からかわないでよ」


 バツが悪くて、楽しそうにしている瑠奈ちゃんから視線を逸らす。

 

 知らないところで自分の話をされるというのは、かなり恥ずかしい。

 悪気はないんだろうが、やめるように注意した方がいいかもしれない。

 

 でもそうしたら、舞のやつ絶対悲しむよな……。

 それはかわいそうだし……うん。注意するのは、やっぱりやめておこう。


「……あ、あの! お兄さん!」

 

 いつもより大きめの声を出した瑠奈ちゃんが、俺をまっすぐに見てきた。

 少し緊張しているような雰囲気だ。

 

 どうしたんだ?

 

 不思議に思いつつ、持っているペットボトルに口を付けようとする。

 

「この前舞ちゃんが、ちょっと気になることを言っていたんです。『最近のお兄ちゃんは女の子にモテモテなんですよ! なんといっても、三股してますからね!』って」

「ぶはっ!?」


 急にとんでもないことを言われたものだから、おもいっきりむせてしまう。

 

 コーラを飲む前でよかった。

 もし口に入れていたら、確実に吹き出していただろう。

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