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【49話】待ち合わせ


 翌日。

 

 俺は駅前の広場にやって来た。

 女子二人とここで待ち合わせてから、映画館へ行くことになっている。

 

「……早く着きすぎたか」


 現在、午前九時。

 集合時刻は、まだ一時間も先だ。

 

 映画が楽しみすぎて早めに家を出てきたのはいいが、さすがにやりすぎた。

 雨宮さんも鷹城さんも、まだ来ていないだろう。

 

「ちょっと失敗したかも。どこかで時間潰さないと――あれ? 鷹城さん……だよな?」


 日陰になっているベンチに、見覚えのある女子が座っているのを見つけた。

 絶対に一番乗りだと思っていたが、先を越されてしまったらしい。

 

 表情に驚きを浮かべつつ、小走りで鷹城さんのところへ向かう。


「よぉ、マサ。ずいぶんと早いんだな」

「そっちこそ。まさか先を越されるとは思わなかったよ。絶対俺が一番乗りだと思ったんだけどね」


 笑いながら、鷹城さんの隣に腰を下ろす。


「もしかして、かなり前から待ってた?」

「い、いや! そんなことねえよ! 私も今さっき来たところだ! そ、その……映画が楽しみでさ。つい、早く来ちまったんだよ」

「やっぱりそうなんだ!」


 昨日電話したときに思った通りだ。

 鷹城さんは今日の映画を、ものすごく楽しみにしている。


 本人の口から聞けたことで、『そうだったらいいな』が『確信』へと変わる。

 少し焦っているというかごまかしているような感じがするけど、それはきっと気のせいだろう。


「でも、あれだね。鷹城さんとこうやって話すのも、なんだか久しぶりだよね」

「……あぁ。そうだな」


 学校での鷹城さんは常に仲の良い陽キャメンバーに囲まれていて、とてもじゃないけど俺みたいな陰キャが話しにいける雰囲気ではない。

 俺の家にも、あの日――ベッドの上で急接近してきた日以降は、一度も来ていなかった。

 

 こうして二人でゆっくり話すのは、ずいぶんと久しぶりな気がする。

 

 でも今日の鷹城さん、どことなく元気がないような……。

 

 思いつめているかのような、重い雰囲気を漂わせている。

 やはりまだ、剣崎に振られたことを引きずっているのだろう。

 

 それなら俺の出番だな!

 楽しい思い出をたくさん作って、少しでも傷を癒してあげるんだ!

 

「鷹城さんは、夏休みどっか出かける予定とかあるの?」

「特にねえな。私、暑いの苦手なんだよ」

「……え、嘘でしょ。冗談……だよね?」

「いや、マジだけど。……なんでそんな驚いてんだよ」

「だって鷹城さんの名前って、『凛とした夏』でしょ? もうその時点で夏が好きなの確定じゃん。なのに苦手って……」


 それにヤンキーという生き物は、なにかにつけてバーベキューが好きなイメージがある。

 

 ヤンキーといえばバーベキュー。

 そしてバーベキューといえば夏。

 

 だからヤンキー要素が多い鷹城さんも、夏が好きなんだと勝手に思っていた。

 

 ……こっちは怒られそうだから言わないけど。


「なに言ってんだお前は。名前で決まる訳ねえだろ」


 なかなか面白いこと言うじゃねえか、と言って、鷹城さんはくつくつと笑う。

 

 お、ちょっと元気になったかも。

 

 はたから見ればこの会話は、まったく中身のない無価値なものだろう。

 でも俺にとっては、こうして彼女が笑ってくれただけで大きな意味があった。

 

 それからもとりとめのない雑談をして、鷹城さんと一緒に笑っていたら。

 

「ごめんねー! 二人ともお待たせー!」


 午前十時五分。

 集合時刻より五分遅れで、雨宮さんがやってきた。

 

 これで全員が出そろった。

 三人は、映画館へ向かって歩き始める。

 

 

「予告編の時点で神作画だったけど、本編はもっとすごそうだよね」

「絶対そうだよ村瀬くん! きっともうね、ぐりんぐりんに動いちゃうって!!」


 俺は雨宮さんと横並びになって、これから見に行く映画についての期待を膨らませていく。

 早く見たくてたまらない。

 

 もう一人の鷹城さんはというと、その少し後ろを歩いていた。

 

 雰囲気は重く、元気がない。

 俺はちょくちょく話を振ってみてもいるのだが、反応は薄かった。

 

 せっかく元気を取り戻せたと思ったのに、元に戻ってしまった。

 

 でも、大丈夫だ!

 

 映画のストーリーは、あらすじの時点で最高に面白い。

 さらには、作画も神ときた。

 

 最高のストーリーと神作画。

 これら二つが合わさった今作はまさに、最強。

 

 最強の映画を見れば、鷹城さんも元気になること間違いなしだ。

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