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【45話】水着選び


 かつてのリベンジを果たした俺は、他のゲームも一通り遊んだ。

 もちろん、陽菜と一緒にだ。

 

 そしてゲームセンターを出た今は、駅前にあるデパートの水着売り場にいる。

 なんでも陽菜は新しい水着を買いたいらしく、それを見にきたのだ。

 

 これなんか結構きわどいな。

 

 女性もののスペースに来たのは初めてだが、露出多めなデザインの水着ばかりに目が行ってしまう。

 好きでそうしているのではないが、これは男の本能と呼ぶべきもの。

 

 男として生まれたからには、仕方のないことだった。

 

「これかわいいかも!」


 マネキンを見た陽菜が声を上げる。

 等身大のマネキンが着用しているのは、フリルのついた白色のビキニだ。

 

 そしてこのビキニも、露出度が結構高め。

 超絶美少女の陽菜がこれを着て海にでも行こうものなら、男どもの視線をひとりじめにしてしまうこと間違いなしだ。

 

「正樹はどう思う? 似合ってるかしら?」

「……」

 

 似合っているかいないかでいえば、もちろん似合っている。

 というか素材が反則レベルの陽菜であればたとえそれがどんなにダサいデザインの水着だとしても、かわいく見えてしまうだろう。

 

 しかしながら、そういう問題ではない。

 俺は無言で、陽菜の上半身を見やる。

 

 その表情は、強張っていた。

 

 …………大きい。大きすぎる。

 

 大きい、が示すのは水着。

 なにと比較してというのは、胸だ。

 

 陽菜の胸に対して、この水着は大きすぎる。

 悲しくなるくらいに、まったくサイズが合っていなかった。

 

 水着のサイズは、特段大きいという訳ではない。

 たぶん、平均くらい。

 

 つまりその……だ。

 平均と比較すると、陽菜の胸はだいぶ控えめなのだ。

 

「どうせ私は、雨宮さんや夏凛に比べてちっさいわよ!」

 

 腕を組んだ陽菜が、フン! 、とそっぽを向いてしまう。

 俺の表情から、言わんとしていることを読み取ってしまったらしい。

 

「そ、そんなこと誰も言ってないだろ!」


 被害妄想だということにしてごまかそうとするも、陽菜はまったく聞く耳を持ってくれない。

 顔を背けたままだ。

 

 みんな違ってみんないい、というフォローを入れようかとも考えるが、余計に不機嫌になりそうなのでやめておく。

 

 見事にふてくされちまったな。

 

 今朝までの俺だったらきっとこの状況を、面倒だな、としか感じなかっただろう。

 でも、今は違う。

 

 さきほどのゲームセンターでの出来事を経て、大きく離れていた俺と陽菜の距離は縮まった……と思う。

 陽菜がどう思っているのか知らないが、少なくとも俺はそうだ。

 

 だからこんな風に不機嫌になられても、こいつらしいな、なんて微笑ましい気持ちになってしまう。


 今はもう陽菜と一緒にいても気まずくない。

 数年間変わらなかった気持ちが、たったの数時間で大きく変わっていた。

 

 自分でも少し驚いてしまうくらいの、大きな変化だ。

 

「今なら昔みたくなれるのかな……」


 気づいたら、口からそんな言葉が出ていた。

 頭に思い浮かんだことを、無意識に口にしてしまっていた。

 

 ヤバい……!

 そう思ったが、もう取り返しはつかない。

 

 背けていた顔を戻した陽菜は、大きく驚いた顔で俺をじっと見つめている。

 こうなったらもう、ごまかすのは無理だ。

 

「あの頃の――仲が良かったときの私たちに、正樹は戻りたいってこと?」

「……あぁ。俺はまた、お前と笑いたいんだ」


 俺だって好きで、陽菜との関係を断ったのではない。

 もし陽菜が俺を嫌っていないというなら、元の関係に戻りたい。

 

 一緒に遊んで、一緒に笑い合う。

 楽しかったあの頃の日々を、もう一度送りたいと思っている。

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