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原爆と竹槍  作者: サイシ
86/93

原爆と竹槍86話

 雪は、広島のことが長崎まで伝わっていたのかと、心の中で驚いていたが、老医師は、広島の原爆をしらなかった。

 だが、長崎の原爆被害者を何人も診ていたので、雪と鈴子の症状を見た瞬間、原爆の被害者が長崎市から来たのだと思ったのだ。

「私の家で休みなさい」

「有り難いことですが、ゆっくりできません」

「どうして?」

「私が帰るのを、夫が今か今かと待っているのです」

「何処で?」

「長崎市です」

「ええ!長崎市?」

 老人は、長崎市で母子が被害に遇ったと思っていたので、驚いて尋ねた。

「大爆弾は、何処で」

「広島市」

「ええ!広島市ですか?」

 老人が驚いた。

「そうです」

 傍で聞いた老妻が。

「長崎市」

 でもと、言いかけると、慌てて老医師が遮った。

「お前は、黙っていなさい」

 老妻を叱り付けた。

「でも」

「話は私に任せない」

「はい」

 老妻は、不満げに従った。

「そうですか、ご主人が長崎市で、奥さんの帰りを待っているんですね」

「はい」

「じゃあ、ご主人に一刻も早く逢いたいと思って、遠い広島市から帰ってきたのだね」

 老医師が労るように言った。

 不満げな老妻も、やっと、夫の真意が分かったようだ。

「はい、やっと、ここまで帰って来れました」

「ご主人が待っているのを引き止める訳にはいかない。長崎市までお送りたいが、どこの家も、子供と老人ばかりなので、お送りで来ません。どうか無事にお帰りください」

 老妻が家に駆け込むと、お麦の握り飯をもってきて雪に渡した。 

 老夫婦の優しい情けに泣きながら、雪に渡した。

(出会った人たちは、みんな優しい人ばかり)

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