原爆と竹槍85話
「権力の無い国家とは?」
「日本国民全員が同じ権利と義務を負い、全員で政治を行なう国家のことだ」
「政府や政治家の権力を決定権を無くし、全国民が決定権を持ち、国民全員が政治行政を管理監督し、指導するのね」
流石、医師の妻、夫の難しい話を理解しいていた。
「そうだ、だが、戦争の原因が国家の存亡にかかわるほど重大なことなら、戦争をするのは当然だ。しかし、今回
の戦争で勝ったとしても大した益はなかった」
老夫婦は今回の戦争の原因が、国家の存亡にかかわるものでないのに、大切な我が子や大多数の国民を死傷させ、不幸にした政府と報道機関が許せずに批判しているのだ。
その時、家の外から、微かな声が聞こえてきた。
老妻が家の外に出てみると、哀れな姿をした母子が居た。
「お水がほしい」
母親に背負われた鈴子が苦しげに言った。
「今はお水がないの、すぐ、探すわね」
雪は、重い足を引きずる様にして、水を探しながら歩きだした。
「お水が欲しいのね」
親子の様子を見ていた老妻が優しい声で言った。
「はい」
振り向いた雪の顔を見た老妻は、雪の痛々しい顔を見て、思わず涙を流し、駆け寄ってきて優しく言った。
「早く家に入りなさい」
「いえ、ここに居ます」
「そう、じゃあ、すぐ、お水を持ってくるからね」
老妻は、すぐ水が入った容器を持ち、老医師の手を引いて出て来た。
「さあ、飲ませて上げなさい」
湯呑み茶碗に、水を注いで雪に渡した。
「ありがとうございます」
雪は鈴子に飲ませた。
「ありがとう、、ございます」
鈴子が弱々しい声でお礼を言った。
「その顔」
鈴子の顔を見て、老妻は泣き出した。
老医師も、目に涙を浮かべて言った。
「可哀相に、その火傷は、大爆弾を受けたんだね」
「はい」