原爆と竹槍83話
「英国は、日本が露西亜と戦争している時、日本の味方をし、日本を勝利に導いてくれた国でしょう」
「そうだ。その上、日本は第一次大戦時、欧米の味方となり独逸と戦争をするなど、欧米と同盟国にも等しい間柄だった」
「でも、今は敵、恩義のある国に対して、なぜ、戦争をはじめたの?」
「権益を主張して譲らなかったからだ」
「権益だけで戦争するのは、恩知らずだし、余りにも犠牲が大きすぎるわ。戦っていて米英連合国の強さが分かったでしょう。その時点で、戦争を回避出来なかったの」
「出来たよ」
「なぜ、しなかったの?」
「露西亜に勝ったという驕り、そして、平和惚けによる、米英、何する者ぞ、という現状軽視と、何とかなると言う甘えだよ」
「何故、そう言えるの?」
「敵国だった独逸との同盟、そして、露西亜と不可侵条約を結び、味方であった欧米を敵に回した愚かさだよ」
「そうね。日本に負けた国は、日本を負かそうと考えても、絶対に助けようなどと考えないわ、日本一国で、世界を相手に戦争をしたら負けるのは明らかなのに、政府や軍部はそんな簡単なことも気づかなかったのね」
「仕方ないよ、何故なら、政府の要人と軍部の上層部は良い家柄のお坊ちゃんが占めているため、喧嘩や競争では親の威光で勝ち、飢えの苦しみなど何の苦労も経験せずに、今の地位に達した人たちなのだ。戦争に負けるなど考えれないし、負けたときの悲惨さは想像もできない上に、戦場で命のやり取りをするのは、自分でなく、兵隊たちで、大砲や銃弾の飛び交う戦地に居ないため、死ぬ恐怖など考えもしないのだ。また、仮に負けたとしても大したことではないと安易に考えているのだ。その理由は、親が助けてくれると言う深層心理が働き、結果の恐ろしさを考えずに戦争を始めたのだ」
「そうよね、今の状況が、それを物語っているわね」
「少数の人間が権力を持つ恐ろしさが分かっただろう」
「権力って、恐いわね」
「国民に政府と軍部の暴走を阻止する権利があれば、今回の戦争は起こらず、多くの国民が死傷したり不幸にならなかった」
「戦争をしなかったら、今日も、日本か米国か、いずれかの野球場で、日米が野球の試合をしているでしょうね。その試合の結果は、沢村投手が米国のホームラン王を三振に取り、勝利していたかもしれないわ。まるで天国と地獄の差ね」
「味方を敵に回したらこうなるのだ」
「驕る政府と軍部が私達の子供を奪ったのね。悔しくてならないわ」