表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原爆と竹槍  作者: サイシ
75/93

原爆と竹槍75話

 しかし、もう立ち上がれなくなり、道端で座り込んでいると、後ろから声をかけられた。

「どうなさいました」

 雪が朦朧とした目で見ると、二人が自分を心配そうに見ていた。

 よく見ると、顔に覚えがあった。

(山田さんだ。もう、もうここまで帰ってこれた)

 山田は、大良町に住んでいる老夫婦で、戦闘機に撃ち殺された綾の両親である。

 雪は名乗ろうとしたが、名乗ったら、両親が殺された綾を思い出し、悲しむと考え、あえて名乗らずに別れようと考えた。

「疲れましたので、一休みしているんです」

「その姿から察すると、米軍機の空襲で焼出されたんだね」

 老夫が言った。

「はい」

「可哀相に」

 老妻が言った。

「私の娘も、米軍の空襲で焼出されたんですよ」

 老夫が目に涙をためて言った。

「そうでしたか」

 答えるのに、やっとだと、気付いた老妻が言った。


「可哀相に、この人たちは何も食べていないようよ」

「そのようだね」

「このお弁当を上げましょうか」

 老妻が言うと。

「それがいい」

 と老夫が答えた。

「これを食べてください」

 言うと老夫妻は、持っていた竹の皮に包んだ物を雪に渡した。

 雪が竹の包みを開くと、白いお米のご飯があった。

「こんな大切なお弁当をいただいてもいいのですか」

「いいも悪いもない、早く、お子さんと一緒に食べなさい」

 老夫婦に急かされ、雪と鈴子は食べたが、喉に詰まる、それを見て老夫婦が持ってきた水を飲ませ、背中をさすった。

 久しぶりの食事、それも、一年に数回しか食べたことがない白いご飯を食べたことで、雪と鈴子に元気が戻ってきた。

 食べ終わった雪が老夫婦にお礼を言った。

「食物が無くて困っていました。でも、美味しいお米のご飯をいただいて、生き返ったような気持ちです。本当にありがとうございました」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ランキング参加しました。ポチとクリックお願いします。 いつもランキング応援ありがとうございます。 人気ブログランキングへ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ