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原爆と竹槍  作者: サイシ
67/93

原爆と竹槍67話

 長崎市に原爆が投下されたことを知らない雪は、夫を一時も早く、安全な場所へ逃がさないねばと思いが強く働き、危険だが土管を出ると乗り捨てた自転車の所へ戻ってきた。

「壊れている!」

 雪が悲痛な声を上げた。

 そして、希望を失ったように呟いた。

「歩いて帰るのには速すぎる、もう、夫を救えないかもしれない、いえ、逢えないかもしれない」

 雪の嘆き悲しむ様子を見ていた鈴子が心配そうに言った。

「もう、自転車には乗れないのね」

 鈴子の声を聞いた雪は、はっと、我に帰った。

「自転車は壊れたけど、私には鈴子がいる!」

 言って、鈴子をひしと抱きしめた。

「ねえ、これから歩いて帰るの?」

「そうよ、歩ける」

「鈴子、長くは歩けないわ」

 鈴子の身体に原爆症状が現れたのだ。

「歩けなくなったら、母さんがおんぶしてあげるからね」

「うん、分かったわ」

 鈴子が疲れた声で言った。


 無論、雪も体調の異常を感じていたが、ただの疲れだと思っていたので、今夜、眠ったら治ると気にしなかった。

 しかし、自転車が無くなったことにより、いくら早く帰れたとしても三日はかかり、鈴子が歩けなくなれば、その倍の日が必要になるのだ。

 そんな事を考えていると、お先真っ暗な気分になり、死にたくなるが、夫や鈴子のことを思うと弱気になれない。

 雪は、襲撃により散らばった麦とさつま芋を探した。

 しかし、麦が弾丸で四方の稲畑に飛び散ったのか探し出せず、探し出せたのは、さつま芋一本だけだった。

 雪は飯盒と水筒を肩に掛け、杖と左手に持ち鈴子の手を取ろうとすると鈴子が言った。

「まだ、一人で歩けるわ」

 言うなり鈴子は雪の前を歩きだすと同時に、鈴子の腰に吊るしていた鈴が、りんりんと悲しげに鳴った。

「可哀相に!」

 雪の目には、鈴子が破れた人形に見え、鈴子の腰に吊るした鈴が、鈴子を哀れんで泣いているように聞こえた。

 堪らず雪は、鈴子を離すものかとばかりに手を取って歩く。

 その二人を天は哀れと思ったのか、一時だが、雲で太陽を隠した。

 少し歩いた時、鈴子が言った。



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