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原爆と竹槍  作者: サイシ
63/93

原爆と竹槍63話

自転車を取り戻さないと、夫の危険が一日多くなる。

 雪は居ても立ってもいられない心境で、自転車と犬たちを見ていたが、犬たち去ろうとはしない。

 この状態が何時、何日まで続くのかと思うと、雪は絶望で死にたくなってくる。

 やがて、太陽が真上にきたが、自転車を取りもどすために、雪と鈴子は、厳しい夏の暑さに耐えていた。

(せっかく頑張って、此処まできたのに、とうとう正午になってしまった。もう、明日の朝までに、夫の所へ帰れなくなった。どうか、明日、長崎へ大爆弾を投下しないでください)

 雪は心の中で泣きながら祈っていた。しかし、誰も現れず時だけが過ぎていった。

 やがて、太陽が西に傾きかけた時、川下から数人の少年たちの声が聞こえてきた。

 見ると、竿と魚籠を持った三人の少年がこっちに向かってやってくる。

「助けて」

 叫んだ心算だが、水も飲めずにいたため、のどがからからになって声が出なかった。 

 だが、犬たちは、雪の動作をみて、激しく吠えた。

 犬たちの声で雪たちの難儀を少年たちが知ったのか、三人の少年は全速力で駆けつけると犬達に向かって言った。「こら、また、弱いものいじめをする犬め、向こうへ行け!」

 口々に叫びながら、三人の少年は竿を振りながら堤防の下へ駆け下りていった。

 その勢いに恐れをなした犬たちは逃げ去った。

 橋の下から、一番、年下の少年が尋ねた。

「この、自転車はおばさんのだろう」

 雪と鈴子を改めて見た少年は、その哀れな姿を正視できずに下を向いて尋ねた。

「ええ」

「自転車をおばさんの所へ持って行くから、おまえ達も手伝え」

 少年達は、自転車を担いで上がってきたが、大切な魚の乾物は犬に食べられていた。

「ありがとうございます」

 雪と鈴子が如何に異様であろうと、純真な心を持った少年達は、何かと手助けをしたいと思っているのか、雪に優しく尋ねた/

「昨夜からですか?」

 雪が頷くと、その少年は、まだ、恐くて震えが止まらない鈴子に、優しい声で言った。

「恐かったね」

「うん、食べられると思ったわ」

 鈴子が恐そうに答えた。

「おばさんも、恐かったでしょうね」

「それは、もう」

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