原爆と竹槍6話
明と雪は、出逢った瞬間から、互いに激しい恋心を抱いた。
無論、二人にとっては、初恋だったが、工場内の恋愛は厳禁だったので、親密な交際はできなかった。
明と雪が十七歳になった時、明は工場の屋根を補修しているとき、足を滑らせて地上に転落し、病院で治療したが右足が不自由になってしまった。
二ヶ月後、明が病院から退院すると、会社から解雇通知が届いていた。
雪を忘ればい明は、雪の近くに居たいと思い仕事を必死に探したが、足が不自由な明が働く場所がなく、長崎市へ帰るしかなかった。
雪が明のことを知ったのは三ヶ月後のことだった。
雪は、明恋しさに激しい咳を伴う病気になった。
すると、会社は雪が結核に罹ったと誤解し、解雇した。
東京へ戻った雪を心配した母親は、雪の悩みを知り、明に逢いに行けば、雪の病気が治るのではないかと考え、明の住所を調べて言った。
「木村明さんの住所を調べてきたわ。明さんに逢いたいのなら長崎へ行きなさい」
母親のやさしい言葉を聞いた雪の病状は急速に回復した。
一ヶ月後、雪は汽車にのって明の家に行った。
雪は明に逢うなり言った。
「私をここに置いてください」
明は雪が逢いにきただけでも驚きだったのに、置いてくれと言われて、なお驚いた。
しかし、足が不自由な上に、小さな農園で、その日暮らしをしている明では、どんなに頑張っても、 雪を幸せに出来ないと思って言った。
「雪さん、僕の足は徴兵もされないほど不自由な足になりました。こんな身体では、雪さんを幸せに出来ませんから、広島へ帰ってください」
明は断腸の思いで言った。
「いえ、帰りません」
「なぜですか?」
「貴方を愛しているからです」
「こんな僕でも!」
「はい」
雪の強い決心を聞き、明は断ることができなかった。
「僕は夢を見ているようだ」
「私もよ」
翌日、明と雪は、二人だけの結婚式を挙げた。
しかし、二人の生活を考えると、小さな田畑に頼っていては、生活ができないと考えとた明は、紡績工場で習得した自転車の修理を行なうことにしたので、何とか生活できた。
やがて、戦争が始まり、自転車修理器具が手に入らないようになったとき親切なに人に助けられ、鈴子も生まれ、日々、貧しいながらも、幸せに暮らしいた。
明は、愛する妻と子供が居る山間の畑へ急いだ。
やがて、明は山間の小さな畑近くへ到着した。