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原爆と竹槍  作者: サイシ
59/93

原爆と竹槍59話

「何か?」

「酷い様子ですが、どこで、米軍の攻撃を受けたのですか」

 同情の眼差しで尋ねた。

(同情の眼差しと言葉、私は、何時の間にか被災者になっていたんだ)

 思わず涙が出そうになったが、心を落ち着けて言った。

「広島です」

「広島も空爆されたのですか?」

 この人たちは、原爆投下を知らないのか、尋ねた。

「はい」

「何時、攻撃されたのですか?」

「昨日です」

「それは、お気の毒にね。私たちは、徳山市で米軍の爆撃を受け、実家へ帰る所です。もし、行くあてが無かったら、私の実家へ行きませんか?実家には、年老いた父しか居ませんので、何の気遣いもございませんよ」

「ありがとうございます。でも、私には急いで帰らなければならない家があるんです」

「そうでしたか、で、お家はどちらに?」

「長崎です」

「ええ!長崎ですか!」


「色々とお話したいのですが、家路が遠いのでそれは出来ませんので」

「引き止めてご免なさいね、じゃあ、長崎に無事帰れるように祈っています」

「ありがとうございます」

 雪親子を哀れと思ったのか、女性は涙を流し見送っていた。

 一分後、いきなり飛行機音が聞こえた雪は、後ろを振り返った。

 その目に映ったのは、あの恐い米軍の戦闘機が、山の陰から突然姿を現し、道路に対して、直角に向かってきたのだ。

 その先には、いま別れたばかりの親子連れがいるのだ。

「逃げて!」

 雪は、恐さも忘れ、叫んでいた。

 だが、雪には助けることができない。

 全自転車を漕いだその時、激しい銃撃音が聞こえてきた。

 あの親子の無事を願って振り返ると、今別れた親子連れの全員が、道路の真ん中に倒れていた。

 戦闘機は雪の姿を見つけたのか、機体を旋回させ、機首を雪に向けた。

 攻撃されると感じた雪は、近くで逃げ込める場所を探したが見つからず。

 絶望の眼差しで右手を見ると、曲がりくねった道の向こうに、神社らしき大きな木が茂る森があった。

 雪は戦闘機の出方を確認すると、戦闘機は、雪が道をまっすぐに逃げると予想したのか一直線に向かってきた。



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