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原爆と竹槍  作者: サイシ
58/93

原爆と竹槍58話

 鈴子の痛みを無くし、夫を安全な場所へ避難さすためには、一刻も早く帰らなければならないのだ。

 心は急くが、夜が明けなければ自転車を走らすことが出来ないため。何時でも出発する用意だけはしておこうとした。

「鈴子、起きなさい」

「まだ、暗いのに、起きるの」

 鈴子も、火傷の痛さで熟睡できていなかったのか、すぐ、目を覚ました。

「間もなく、夜が明けるから、これを食べなさい」

 雪は鈴子に、水筒と生のさつま芋を渡した。

「母さんは食べないの?」

「今朝はなんだか食べたくないのよ」

 食べない理由は、食料が残り少なかったからだ。

 長崎へ帰り着くには、今日と明日の夜までの食料が必要になるが、残っている食料は、麦が一食と、小さなさつま芋が6本である。

 この量は、鈴子が毎食、さつま芋一本、食べられるだけの量しかない。

 二日なら、水を飲んでも飢え死にすることはないと考えた雪は、今朝から食べないと決め、もし堪えられなくなったら、道端の草でも食べたら良いと考えていた。

 だが、それ以上の日数がかかれば、安全とはいえないと思い。

 明日の夕方までには、何が何でも小長井まで戻りたかった。

 小長井まで戻れば、夜道を通って我が家へ帰る自信があった。

 だが、小長井夕方までに到着するには、今日中に福岡県の八幡市より向こうへ行っていなければならない。

 やがて、待っていた東の空が微かに白くなり、景色の輪郭がぼんやりと見え出した。

「さあ、父さんや、お婆ちゃんの待っている家に帰るわよ」

 雪は、鈴子を背負うと、川原から堤防の上へ駆け上がり、停めていた自転車の荷台に鈴子を乗せるを、自転車を力一杯漕いで走りだした。

「身体が痛くない?」

「痛いけど我慢するわ」

「家に帰ったら、お医者さんに治して頂こうね」

「うん、早く帰りたい」

 雪は山陽道を走る。

 やがて、小郡を過ぎたとき、大人の女性と三人の子供の集団に出会った。

 雪が、その人たちを見た瞬間、衣服が破れて居なくても、被災者だと分かった。

 だが、先を急ぐ雪に慰める時間はないので、目礼して通り過ぎようとした。

「待ってください」

 中年の女性に呼び止められた。

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