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原爆と竹槍  作者: サイシ
56/93

原爆と竹槍56話

前方に橋を見た雪は、昨夜以後、何も食べていないことに気づいた。

「お腹、空いた」

 鈴子に尋ねた。

「分からないわ」

 鈴子は火傷の痛さ、そして、火災など様々な恐怖に遇ったのだ。

 食欲が湧かないのは当然のことである。

 無論、雪とて同じである。

 雪は、夫を助け、鈴子の火傷を治療するためには、一刻も早く、長崎へかえらなければならない。

 その為には、明日からの強行軍に堪えられる体力を作らねばならないのだ。

「今夜は、あの橋の下が宿よ」

 日本の地形は、列島を海が包み、列島の中心を縦断するように高い山脈が連なっているため、山脈から無数の河川が日本海、太平洋、瀬戸内海、東シナ海などに流れこんでいるのだ。

 そのために、山脈に対して平行に進んでいれば、数キロから十数キロの間には、必ず、河川に出会う事が出来、都市より上流の川は清く、水は安心して飲むことができる。

 あの橋の下でと、一夜の宿を決めた雪だったが、そこには、被災者が居た。

 橋の下を諦めた雪は、川原を一夜の宿に決め、鈴子を背負って川原へ下りて行った。

 川原の所々には、青草が生えていた。

「鈴子、ここに座っていなさい」

 雪は、鈴子を柔らかい草の上に座らせた。

 さつま芋を洗いに行こうとすると、鈴子が恐そうに尋ねた。

「母さんは、何処へ行くの?」

「今夜はここで一夜を明かすから、川の水でさつま芋を洗いに行くのよ」

「恐いから早く帰ってきてね」

「心配しないね」

 雪は急いで、さつま芋を洗って戻って来た。

「さあ、食べましょう」

 洗った生のさつま芋を鈴子に渡した。

「なぜ、茹でないの?」

 鈴子が尋ねた。

「川原だから、火を炊けないからよ」

「なぜ、炊けないの?」

「もう忘れたの」

 敵機の恐ろしさ教えていたために、鈴子は、それ以上、質問しなかった。

 食事を終えた二人は、柔らかい草の上に傷ついた身体を横たえた。

 火傷が痛むのか、鈴子が呻きながら寝返る。

「だっこして上げようか」


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