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原爆と竹槍  作者: サイシ
54/93

原爆と竹槍54話

 鈴子は、お婆ちゃんは、どんなに痛くても我慢すると雪が言ったことを忘れず、じっと我慢しているのだ。

「痛くても我慢してね、すぐ、お医者さんに診ていただくからね」

 やがて、多くの人が出入りする建物の前に到着した。

 よく見ると、郵便局だった。

 自転車を停めた雪は、鈴子に言った。

「ここで、少し待っていてね」

「お医者さんが見つかったの?」

「いえ、郵便局を見つけたから、父さんに帰ることを報せるのよ」

「早く、父さんの所へ帰りたい」

 鈴子が泣き出しそうな顔をして言った。

「電報を打ったら、急いで帰ろうね」

 雪は、郵便局へ入った。

 局内は、爆弾による被災者など、多くの人が順番を待っていた。 

 雪が急いで書類を書き、順番待ちをしながら、最前列の人を見ていると、その人が料金を支払っているのが見えた。

 雪は手で首に掛けた袋を探す。

「お金がない!」


 雪が悲鳴に近い声を上げた。

 その声に、周囲の人が驚いたように雪を見たが、その哀れな姿に涙する者も居た。

 お金が無くては電報は打てない。

 雪は郵便局を出ようとしたとき、鈴子の首に袋を掛けたことを思い出した。

 雪は郵便局から飛び出し、鈴子の首を見たが、袋は無かった。

「無いはどうしよう」

 打ちひしがれたように呟く雪。

 鈴子が尋ねる。

「何がないの?」

 鈴子の首に掛けた袋には、大切なお金などが入っていたことを教えたら、鈴子は自分のせいと思って悲しむに違いない。

「母さんがお金を落としてしまったの」

「どこで落としたの?」

 落とした所を考えると、すぐに見当がついた。

「自転車を修理した広場よ」

「落とした所へ行くの?」

「そうよ」

 雪は後戻りをしようと、自転車の向きを変え、前方を見ると、雪の望みを断ち切るような火の海だった。

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