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原爆と竹槍  作者: サイシ
53/93

原爆と竹槍53話

 雪は、心の中で詫びていた。

 その雪を追い立てるように、広場に隣接した家にも火が移ったのか、小さな炎と上げ始めた。

「もう、目を開けてもいいわよ」

 鈴子は、焼け爛れた目蓋を開けた。

 雪は、痛さに堪える鈴子が可哀相でならなくなって言った。

「痛くない、さあ、母さんが抱いてあげる」

 鈴子に対して、今の雪が出来る愛は、抱くこと以外ないのだ。

 雪は、鈴子を抱いて、自分の頬を鈴子の頬に、そっと、合わせると、鈴子が、嬉しげに抱きついてきた。

 しかし、すぐ、痛いと言って、離れようとした。

「痛かったのね。ごめんね」

 その間に、広場に隣接した家全体が火事となり、これ以上、ここで止まることが不可能になってきた。

 鈴子を自転車に乗せた雪は、鈴子を元気付けるように言った。

「さあ、お父さんやお婆ちゃんが待っている家に帰るわよ」

 雪は、立ち上がる煙で火事の所在を確認しながら、自転車を走らせた。

 だが、その道も、火事から逃れる人や荷車で混雑していた。

 その逃げる人たちを追い掛けるように、火事が追いかけてくるため、人々の阿鼻叫喚が一層、危機感を煽る。

 やがて、火事の心配が無いところまで逃げることが出来た。

 火事の恐怖感は鈴子も持っていたのか、鈴子は身体に強い風圧を受けていたにも関らず、身体の痛みを感じていなかったようだ。

 しかし、その恐怖感が薄れて行くに従い、痛みを感じ始めた。

「痛い!」

 鈴子が悲鳴を上げた。

「どこが痛いの?」

「顔や腕よ」

 雪も顔や腕、足が風に当たり、強い痛みを感じていたのだ。

「風が当たって痛いのね」

「うん」

「気付かずのごめんね」

 雪は、鈴子を前の椅子から降ろし、後の荷物を鈴子の椅子に積み替え、そこへ鈴子を乗せて走った。

「どう、まだ、痛い?」

「痛いけど、我慢するわ」

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