原爆と竹槍48話
「鈴子、あそこに高い櫓が見えるでしょう、あの近くにお婆ちゃんの家があって、お婆ちゃんが、早く鈴子がこないかなあと待っているわ」
「何処?」
雪が指差した前方の空にB二十九爆撃音が飛んでいた。
昼間のB二十九は、空爆の心配なしと思い込んでいた雪だったが、今日は、なぜか、気になり、よく見ていると、何時もの漫然とした飛び方でなく、獲物を狙う猛禽類のように中区に向かって飛んでくるのだ。
「母さん、逃げて!」
雪は思わず叫んだ。
中区の上空に来たB二十九は、中区を狙いすましたように、爆弾らしき物を投下した。
雪は恐怖感に襲われ目を閉じた。
その瞬間、中区を中心に、青白い閃光が放射状に射抜き、猛烈な熱風が吹き付け、雪と鈴子は大きく吹き飛ばされて失神した。
この爆弾は、全ての物を破壊する原子爆弾だったのだ。
どのくらい時間が経ったのか分からないが、雪は顔や身体の痛さにより意識を取り戻し目を開けた途端、目に見えたのは、町が真っ赤に燃えている光景で、雪の身体にも、その熱い熱気が伝わって来た。
「鈴子!」
雪が恐怖の声、鈴子の名を呼ぶ、だが、鈴子の返事がない、雪は、目を懲らして辺りを見回すと、鈴子が身体を折り曲げるように倒れていた。
走りよった雪が、泣きながら鈴子を抱き身体を揺すり、耳元で悲痛な声で呼ぶ。
「鈴子!」
気がついたのか。鈴子は目を開けた。
「良かった、生きていたのね」
鈴子を強く抱きしめた。
「痛い!」
焼けただれたからだを強く抱かれた鈴子が悲鳴を上げた。
「ごめんね」
雪は、鈴子を草の上に座らせた。
だが、先ほどまでのあの可愛い鈴子の顔はなく、赤く焼けただれた醜い鈴子の顔だった。
「可哀相に」
雪が鈴子の顔を撫でる。
「痛い!」
鈴子が悲鳴を上げた。
「ごめんね!」
雪が謝りながら、心配そうに顔を近づけた。
「恐い!」