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原爆と竹槍  作者: サイシ
46/93

原爆と竹槍46話

「うん」

 頷いて、鈴子が振り向いて尋ねた。

「今、お婆ちゃんは何をしているの?」

「可哀相に、大けがをしているから、きっと、お隣のお医者さんの所に居るわ」

「大けがって、痛いの?」

「それは、痛いわよ。鈴子も、痛いのが嫌なら、大けがしないように、気をつけましょうね」

「うん、じゃあ、お婆ちゃんは、痛い、痛いって泣いているの?」

「大人だから、どんな痛さも顔に出さないで、堪えているわ」

「なぜ、痛いのに堪えるの?」

「それはね、周囲の人に心配をかけたくないからよ」

「じゃあ、鈴子も、どんなに痛くても堪えるわ」

「お利口さんね。鈴子は、今の言葉をお婆ちゃんが聞いてたら、きっと、涙を流して喜ぶわ」

「あたし。お婆ちゃんを喜ばしてあげたいから、早く会いたい」

「もう少し我慢しなさい」

「分かったわ」

 しばらくすると、鈴子が建物を指さして尋ねる。

「あれは何?」

 雪は広島県生まれだが、十五歳まで広島市の中区からあまり外に出たことがないため、その建物が何かは知らない。

「ごめんね、母さんは何も知らないのよ。だから、鈴子が大きくなったら、父さんと、三人で広島見物しに来ましょうね」

「うん、わたし、早く大人になりたいわ」

 言ったあとで、鈴子はまた急かす。

「お日様があんなに上がっているのに、お婆ちゃんの家、まだなの」

 鈴子に言われて、ふと、周りをみると、見覚えのある建物があった。

 しかし、その建物が何かは知らない。

 だが、母が居る中区までは数キロあった。

「間もなく、おばあちゃんの家よ。さあ、急ぐわね」

 雪は、渾身の力を込めて、自転車を漕いでいると、遥か向こうに見覚えがある高い櫓が見えた。

「鈴子、あそこに見える高い櫓の近くに、お婆ちゃんの家があるのよ」

 と言った時、バンと音がして、自転車のチューブがパンクした。

「パンクだわ」

 このまま自転車に乗っていたら、タイヤとチューブに傷がつくために、雪は急いで自転車から下りた。


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