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原爆と竹槍  作者: サイシ
45/93

原爆と竹槍45話

 そのうち、道路が見えるようになった。

「さあ、出掛けるわよ」

 自転車に鈴子を乗せた雪は、母親がいる生家へ向かって自転車を走らせた。

 鈴子は、その円らな瞳の中で、祖母の顔を想像しながら尋ねた。

「母さん、お婆ちゃんはどんな人、鈴子、嫌われない?」

 鈴子が祖母と会ったにのは、鈴子が生まれて間もない時だった。

 その為、鈴子は祖母の顔を知らないのだ。

「お婆ちゃんは優しい人よ。鈴子を嫌ったりしないわ」

「よかった」

 その頃、長崎市では、明が楠の下に立ち、楠の幹にチョークで七本目の線を引きながら呟いた。

「雪と鈴子が旅に出てから、はや、七日目、もう、遅くても、後、三日で帰ってくるだろう」

 明は、その日が待ちどうしくて、北の空を見上げていた。

 雪が走っていると、なだらかな登りの坂道が現れ、頂上に着いたとき、広島市の全体が見えた。

「よかった」

 雪は胸をなで下ろした。


 今まで、雪は、広島市が空爆されたのか等と考えると、本当に空爆されるのではないのかと思って、考えないようにしていた。

 しかし、空爆されていないことを目にし、心の底から安心感が湧いてきた。

 雪は、広島の空気を一杯に吸い込んで言った。

「懐かしい故郷の匂い、そして、お婆ちゃんの匂いを感じる。もう、故郷は目と鼻の先にあるわよ、鈴子」

 長い旅から考えると、すぐ、そこに違いないが、中区までは、まだ二十キロはある。

 鈴子は待ちきれなくな、振り向いて尋ねる。

「お婆ちゃんの所は、すぐ近くなの?」

「まだまだよ」

「そんなに遠いの?」

「そんなに遠くないわ」

「じゃあ、お婆ちゃんの家が見える?」

「家はまだ見えないわ」

「まだなの」

 鈴子が少し失望したように言った。

「お婆ちゃんの家が見えたら教えてあげるから、それまで。まわりの景色を見たり、母さんと話しましょう」


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