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原爆と竹槍  作者: サイシ
39/93

原爆と竹槍39話

 広子が駆け寄ってきた。

「言うのを忘れていたけど、米軍の戦闘機が現れたら、いえ、米軍機の音が聞こえたら、すぐ、隠れてね」

「はい、でも、なぜ?」

 雪は有明海の事を話した。

「そんなことがあったの」

 広子が恐そうに言った。

「だから、気をつけてね」

「はい、気を付けます」

「じゃあ、無事、阿蘇へ帰れることを祈っています」

 広子を後に、雪は八幡に向かった。

 太宰府に入って、雪の方向感覚が乱れはじめ、何度も道を間違い、何時の間にか、山中に迷い込んでしまった。

 しかし、幸いにも、通りかかった地元の人の導きにより、長崎街道に出られ、八幡市を目前にしたときには、まだ、日は沈んでいなかった。

 雪は迷った。

 遅れを取り戻すために先へ進むべきかを。

 だが、雪は八幡市の広さを知らない。

 もし、八幡市を通り抜け出来ない間に日がくれてしまえば、町中で一夜を明かすしかないのだ。

 だが、それには、米軍機の空爆を覚悟しなければならないのだ。

雪は前進するのを諦め、川と橋を探したが見つからないため、一キロほど後戻り、小さな橋の下で一夜を過ごすことにした。

 だが、橋の下の広場は、雪と鈴子がやっと寝られるほどの広さしかなかったので、自転車を橋の上に置き、食事に必要な物だけ持ち橋の下へ降りた。

 雪は食事の用意をしながら、鈴子に尋ねた。

「鈴子に作った父さんの椅子、乗り心地はどうだった?」

「母さんの背中は柔らかくて気持ちいいけど、椅子は堅かったわ」

「じゃあ、もう、乗りたくないのね」

「堅いけど乗りたいわ」

「どうして?」

「前がよく見えるし、風が当たって涼しいから気持ちいいわ」

 鈴子が小さくても背負っていると疲れが溜まる。

「そう、じゃあ、明日からも、椅子に乗ってね」

 鈴子が小さくても、背負っていると疲れがたまる。

「うん、分かったわ」

「ありがとう」

 雪は鈴子を抱きしめてほおずりをした。

「母さん、お腹すいたわ」

「今、炊き始めた所だから、辛抱するのよ」


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