表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原爆と竹槍  作者: サイシ
38/93

原爆と竹槍38話

 雪の運命は電報で変わった。

 長崎を出た日だけ平穏だったが、それ以後は、身の毛もよだつような恐怖の連続だった。

 米軍機の飛行音は、雪に恐怖を植え込んだ。

 そのため、どんな小さな飛行音も聞き逃さないようになっていた。

 数時間後、その飛行音が聞こえたため、雪は目覚めた。

 雪は、橋の下から外に出て、空を見上げた。

 その脳裏に、畑で作業した過ぎし日、親しみを込めて米軍機をみている自分の姿を映しだしていた。

(なぜ、無抵抗の人間を殺すようになったの)

 雪は、何時も、このことが頭に浮かび、米軍機の空襲を見かけるたびに、問いかけたが答えは帰ってこなかった。

 その思いを打ち破るように、甘木市の空が真っ赤に染まったのと同時に、激しい爆発音が伝わってきた。

(また、無抵抗の人が多く殺された)

 身震いする雪、多くの被害者のことを考えると、雪は眠る気になれなかった。

 だが、太陽は地上で如何なる事が起ころうとも、時間どおり、朝を告げるのだ。

 一睡も出来なかった雪が軽い咳をした。

「お早うございます」

 広子も、明日からの事を考えると熟睡できなかったのか、雪の小さい咳で目覚め、互いに初めて、相手をよく見れた。

 広子親子は、焼出されて間もないことから、衣服の汚れは、雪と鈴子と同じくらいだった。

「よく眠れました?」

 雪が心配そうに言った。

「はい、雪さんのお陰で、よく眠りました」

「そう、私は先を急ぐので、自転車を漕ぎながら食事しますので、一緒に食事する事ができませんが、それでいいですか」

「はい、どうか早くお母さんを安心させて上げてください」

 その間、三人の子供たちは、自分たちが置かれた厳しい状況をしらず、楽しげに遊んでいた。

「じゃあ、私はお先に出掛けます。鈴子、皆さんにお別れの挨拶をしなさい」

 鈴子は名残惜しそうに、二人の子供に手を振った。

「鈴子、今日からは、父さんが作ってくれたこの椅子に座るのよ。さあ、乗せるわよ」

 雪は鈴子を椅子に乗せ出発しようとしたが、何を思ったのか急停車した。

「広子さん」

「何か?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ランキング参加しました。ポチとクリックお願いします。 いつもランキング応援ありがとうございます。 人気ブログランキングへ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ