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原爆と竹槍  作者: サイシ
36/93

原爆と竹槍36話

広子は諦めたように言った。

「福岡は以前にも空襲されたのでしょう」

「はい、福岡は以前に空襲されたので、私はもう空襲されないと思っていたら、一昨日の夜中に空襲されたのです」

「恐かったでしょうね」

「でも、私には二人の子供が無事なので、まだ、運が良いほうです」

 確かに、神社に居た老人や子供のように、行くあてもなく、明日の食べる物もない人たちよりは、幸せと言えるだとう。

「そうでしたか、それで、ご主人は?」

「昨年、戦死したわ」

 そう言って泣き崩れた。

「可哀相に」

 夫、明を家に残しての旅でも寂びしい雪だから、広子の悲しみが、どれほどのものか分からないるため、雪は広子を強く抱きしめた。

 広子の心が落ち着いたとき、雪が尋ねた。

「何か食べましたか?」

「いえ、何も食べる物がないので、途方にくれています」

「お気の毒に」


雪には、広子の哀しい運命を思うと、お気の毒としか言えなかった。

「母さん、お腹すいたよ!」

 広子の子供がひもじさに堪えかねかねて言った。

「川の水を飲んでいなさい。阿蘇に帰ったら、幾らでも食べさせてあげるからね」

「阿蘇へは何時、帰れるの」

 子供が尋ねた。

「明日の夜よ」

 阿蘇までの道を雪は知らないが、子供、それも幼い二人の子供を連れて歩き、一日で行けるほど近くないことだけは分かっていた。

「広子さん、私達親子もお腹がすいてます。もし、よろしかったら、一緒に食べませんか」

「食物があるんですか?」

 広子の声が喜びに溢れていた。

「食物と言っても、麦のおにぎりよ。それも、これから炊くんです」

「私たちも麦のご飯しか食べたことがないので、喜んで頂きます」

「じゃあ、これから炊くわね」

 飯盒で大人二人と子供三人の愛は炊けないため、まず、最初に炊くご飯は広子と二人の子供に食べさせるために炊いた。


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