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原爆と竹槍  作者: サイシ
35/93

原爆と竹槍35話

 突然、隅の暗い所から女性の声がした。

「あら、御免なさい。今夜はこの橋の下で一夜を明かそうとしたんだけど、お邪魔になりそうなので、他へ行きます」

 雪が立ち上がろうとすると、女性が引き止めた。

「他に行かず。ここに居てください」

「いいんですか?」

 先客が女性と知った雪が嬉しそうに尋ねた。

「小さな二人の子供と私だけだったので、とても、不安でした。でも、あなたが居てくれると、その不安も消えます」

「そうね、私もあなたと一緒に居るほうが心強いわ」

「これは私の子供よ」

 女性が子供を指差したが、身体の大きさは分かっても、顔は暗くて分からない/

「そう、下のお子さんは、私の子供と同じぐらいの年なのね。私の娘を紹介します。私は木村雪、娘は鈴子です」

「健二と育子、ここへ来なさい」

 女性に呼ばれた二人の子供が雪の前に来た。

「子供の名前は分かったでしょう。私は神谷広子です」

 雪と広子は、互いに挨拶をかわした。

広子は、微かに見える自転車を羨ましそうに見て言った。

「自転車でどこへ行くの?」

「広島です」

「広島?それは此処から近いのですか?」

「いえ、遠い所です」

「私は阿蘇の麓へ戻る途中ですが、それより遥かに遠いんですね。そんな遠い所へ、どんな用で行くのですか?」

 雪が母親のことを話すと、広子が泣き出した。

「どうしたの?」

 雪が尋ねると。

「私たちも、米軍機の被害者なのです」

「どんな被害に遭われたんですか?」

「私は福岡市に住んでいましたが、一昨日、米軍に空襲され、家を焼かれ、住む家が無くなったので、阿蘇の実家へ帰る途中だったのです」

「酷い目に遭ったのね」

「ええ、悔しくて、悔しくて堪らないわ」

「その気持ち分かるわ」

「でも、悲しんでも、元には戻らないわ」



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