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原爆と竹槍  作者: サイシ
27/93

原爆と竹槍27話

老婆が静子に言い聞かせた。

 心を鬼にして言った雪だったが、静子が可哀相で泣かずにいられなかった。

「さあ、後は私に任せ、お母さんに所へ行きなさい」

 老婆は雪の心情を察し、急かすように言った。

「はい、有り難うございます」

 雪はそっと静子を離し、鈴子の手を取り、老婆の家を出ようとしたとき、鈴子が、静子に手を振った。

 すると、静子が泣きながら、手を振って見送る。

 その悲しみが鈴子につたわったのか、鈴子の目に涙が浮かんだ。

 老婆の家を後をした雪だったが、幼い静子のことを思うと涙が止まらない。

 やがて、雪の行く手に、一軒の家が現れた。

 雪は、その家に入った。

「ごめんください」

 はい、声とともに中年女性が出てきた。

「私は長崎から広島へ行く者ですが、ここへ来る途中、一軒の家が米軍機に空襲され、母親は即死し、静子という少女が一人、破壊された家路で泣いていました」

「ええ!良子さんが死んだの」

 女性は、飛び上がるほど驚き、大声をだして泣いた。

「静子さんのお母さんをご存じだったのですね」

「はい、仲の良い友人でした」

「そうでしたの」

「可哀相な良子さん」

 女性は手を合わせ冥福を祈った。

「悲しみの中、こんなことを言うのは心苦しいのですが、私は静子さんの面倒がみられませんので、一人暮らしの老女に後を託してきました。老女は快く引き受けてくれました。でも、老女は何分にも、眼や耳が不自由なので、静子さんと老女が心配でなりません。もし支えがなければ、時々、見舞って頂きたいと思って、お願いに上がりました」

「あなたは、先を急ぐ身なのに、よく報せてくださいました。どうか、心置きなく広島へ行ってください」

「もう一つお願いがあります」

「何でしょうか」

「何時の間にか、道に迷い、佐賀市へ行く道がわからなくなりました」

「この道を通って行っても佐賀市に着きますが、遠回りになりますので、あの道を通って行き、交差点で右に行くと長崎街道にでます。時々、道の分かりにくい所がありますがその時は、誰かに尋ねなさい」

 女性は手振り身振りで、道を詳しく教えた。

 雪は連れを取り戻そうと走ったが、鹿島市から佐賀市入ったとき、夜がきた。

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