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原爆と竹槍  作者: サイシ
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原爆と竹槍2話

しかし、何事にも従順な日本国民は、政府と新聞報道を疑わず、苦難に堪えていたが、新聞が話題作りの為、日本兵が現地人を五人切り十人切りするねつ造記事を掲載したとき、流石の従順な国民が怒りも顕に、新聞社に対して、現地の人を侮蔑したと、記事の取り消し謝罪するように抗議したが、独裁機関らしく、報道の自由を盾に無視したのだ。

 やがて、日本の敗戦が濃厚になった昭和二十年七月。

 長崎市では空爆警報が頻繁に鳴り、上空を米軍機が飛びかっていた。

 しかし、全国各地に爆弾と焼夷弾を投下し、都市や市民を焼き尽くしたB二十九爆撃機と戦闘機は、ねぜか長崎市を攻撃しないため、市民の心の中から、米軍機の恐ろしさが徐々に薄れていった。

 七月三十日、今日も空襲警報が鳴ると間もなく、南の上空からB二十九爆撃機が白い飛行雲を引きながら現れたとき、自転車に乗った一人の女性は、敵機が恐くないのか、上空を眺めもせず、坂道を登り降りしながら、山里小学校の方へ向っていた。

 やがて、山里小学校を通り過ぎたとき、大きな楠の木の横に、木村自転車修理と看板が揚げられた一軒の家があった。

 女性はその家の前に立つと声をかけた。

「木村さん」

 応答がない。

「木村明さんは、居ますか」

 女性は、声を大きくして呼んだ。

「はい」

 近くの防空壕の中から声がして、自転車のタイヤを持った若い男が、不自然な足を引きずりながら外へ出てきた。

「木村明ですが、どんな御用でしょうか?」

 明が人懐っこい顔で尋ねた。

「私は、郵便配達員の山田美絵と申します。今日は、電報をお届けにまいりました」

 美絵は、中年だが、名前のように美しい女性だった。

「電報、もしかすると、広島からですか?」

 明が嬉しそうな顔をして尋ねた。

「はい、そうです」

 美絵は笑顔で答えた。

 だが、電報は明が待っていた朗報でなく、木村家が悲惨な運命を辿る前兆だったのだ。

「電報を今か今かと待っていたんですよ」

「そうだったんですか、じゃあ、これを」

 明は、電報を受け取ると、美絵の勇気と労をねぎらうように言った。

「恐い敵機が上空を飛ぶ中、それも女性が怖がらずによく来てくれましたね」

「いえ、それほど恐いと思っていませんわ」

 意外な答えに明は驚いて尋ねた。

「米軍機が恐くない、何故ですか?」


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