表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原爆と竹槍  作者: サイシ
16/93

原爆と竹槍16話

「うん、鈴子、我慢するわ」

「鈴子は、本当にお利口さんね。そうだ、母さんと一緒に歌を唄いましょう」

 母子は淋しさを払うように仲良く唄った。

 その歌声と合唱するかのように、草木が緑の葉を揺らして爽やかな音を響かせ、涼しい風を送っていた。

 その風を受けながら、母子は仲良く、歌を唄い、草木や川の流れで目を癒し、出会う人々と挨拶を交わし、知った道を嬉嬉津へ走る。

 やがて、岡本家の前に着いた。

 玄関には、以前のように、岡本五郎の表札があった。

 雪は、岡本の家の前に立った。

「ごめんください」

 だが、家は静まり返っていた。

「岡本さん、居られますか?」

 耳が聞こえないのではと、声を大きくすると、隣の家から老人が出てきて言った。

「岡本さんは、居ないよ」

「居られないのですか」

 雪が気落ちしたように言うと、老人が尋ねた。

「岡本さんに、どんな用?」

「私は、以前、岡本さんにお世話になった者です。今日は、久しぶりに岡本さん宅の前を通ることになりましたので、ご挨拶にまいりました」

「そうでしたか、でも、岡本さんは居ませんよ」

「どこかへ行っているんですか?」

 老人が悔しそうな顔をして言った。

「亡くなりました」

「ええ!亡くなったんですか?」

 雪は驚いて聞き直した。

「そうです」

「病気ですか?」

「いえ、佐世保市に娘さんが嫁いでいたので、会いに行った日、米軍機の空襲によって、焼死したのです」

「なんて、お可哀想なことなんでしょう。もっと、早く来ていたら、岡本さんの元気なお姿を見られたのに」

「岡本さんが死んだのも、貴女が早く来られなかったのも、貴女の責任ではありません、こんな時節のせいです」

 老人は、政府の責任と言えないのか、時節の責任に転化した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ランキング参加しました。ポチとクリックお願いします。 いつもランキング応援ありがとうございます。 人気ブログランキングへ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ