10話 初めての異性の友達
友達。
親しい間柄の人。
「高槻君と私は……友達」
つぶやいてみて、
「えへへ」
顔がにやけてしまいます。
高槻君と友達になることができた。
ただ、それだけのこと。
それなのに、すごく嬉しい。
ついつい笑みを浮かべてしまうくらい嬉しい。
なぜだろう?
友達ができるのは初めてじゃない。
というか……
自慢ではありませんが、友達は多い方。
クラスの大体の子と仲良くしてて……
他のクラスの子とも、ある程度、交流を持っています。
ただ……
異性の友達は初めてです。
今まで、仲良くならなかった異性がいなかったわけではありません。
笑顔で言葉を交わして、遊びに行ったこともあります。
でも……
そうして仲良くなると、例外なく、告白されてしまいます。
私は、そんなつもりはないのに。
しかし、相手はそのつもりになってしまう。
そのせいで余計なトラブルを招いたこともありました。
結果として……
男女間の友情は成立しない、ということを学びました。
男女間の友情はない。
あるのは恋愛だけ。
……と、思っていたのですが。
「なんだか、高槻君は、今までの人と違う感じがしました」
気のせいなのかもしれない。
勘違いなのかもしれない。
それでも、彼となら『本当の』友達になれるかもしれない。
そんな期待を抱いてしまいます。
なぜか?
それは、自分でもわかりません。
強いて言うのならば、直感。
なんて曖昧な。
自分でも呆れてしまうほどの適当さ加減。
でも……
「……仲良くなりたいな」
初めてそう思うことができた。
もっと、もっと。
今以上に距離を……
どうして、高槻君を相手にそんなことを思ったのか、それはわかりません。
ここもやはり曖昧な部分。
でも、仲良くなりたいと思った気持ちに嘘はないと思うから……
「がんばらないといけませんね!」
仲良くなれるようにがんばろう。
そう、私は決意するのでした。
「とはいえ……」
どうしたら仲良くなれるのだろう?
親しい様子で接する?
笑顔を振りまく?
……それはなにか違うような気がしました。
適当な愛想を見せるのではなくて。
本心からの行動でないと、高槻君の心は動かせないような気がします。
「というか……仲良くなる、ならない以前に、まずは感謝を伝えないとですね」
高槻君に、これからお弁当を作ってほしいとお願いしました。
快く引き受けてくれました。
もちろん、材料費は払いますが……
でも、彼の時間を奪い、手間をかけてしまうことは事実なので……
そのことに対する感謝を示さないといけません。
「感謝……感謝……感謝?」
なにをすればいいのでしょう?
同性ならともかく、異性に、どう想いを伝えればいいのでしょう?
下手をしたら、過去のように勘違いをさせてしまうことも……
「むぅ……悩ましいですね」
私は、高槻君のお弁当をもらうことができて、とても嬉しいですが……
同時に、なにかしらの形で、高槻君も喜んでほしいです。
そんな対等の関係でありたいと思います。
それを成し遂げるためには……
「うーん」
私はしばらくの間、高槻君のことで頭を悩ませるのでした。