三寒四温
明け方のベランダ
起きかけの光がそろりと手を伸ばす
ひと晩、誰にも触れられなかった空気は
みずみずしく健やかで
窓を開ければ、淡い香りを届けてくる
春が近いと
フライパンを温めて
オリーブオイルをひとたらし
ベーコンを四角く並べたら
真ん中に卵を落として
白いお皿にレタスをちぎって
赤いミニトマトを2つ添え
籠にはパンを並べる
少しだけ透き通る苺ジャムの赤と、バターの黄色
ゆっくりゆっくり、日が昇る
目玉焼きは仕上げに黒こしょう
ベーコンの香りとコーヒーの香りが絡まれば
朝の支度はできあがり
のんびり目覚めてゆく街を見下ろして
2人一緒に春を待つ
緩みだした寒さに小鳥が歌い出し
花誘うその日まで
またやってくる寒さに備えて
肩には柔らかいショール
さやかな風に舞う春の気配を
ミルクと一緒にコーヒーに入れて
あなたはひと口、口づけた……