表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

死にました

意識がはっきりする。

目に入るのはどこまでも続く白い床と、星みたいな何かが輝く黒い空。

そして謎のクッションの上で横になっているこの私。


何処ここ?なにこのクッション?ふわっふわですね。


「ようこそ」


「はっ!どちら様?」


後ろからかけられた声に反応して振り向く。

白い床の先、なんかめっちゃでかい装飾がされた玉座のような椅子の上に、一人の女性が座っていた。

肘掛けに掛かるほど長い桃色の髪、左右にたたまれた一対の白い翼。

足を組み、肘をついて、金色の瞳を気だるそうにこちらに向けている。

現実離れしたその姿は神様のようだった。


うおっ、まぶしっ!装飾が輝きすぎでは?

あ、待って、立ったからってクッション消さないでよ!ふわっふわだったのに。


「私?神様よ」


ゆっくりとした声で告げられる。


「なるほど」


なんだ神様か。あ〜うん、よく話したりするよね、俺も神頼みする時に話しかけてるし。

それじゃここは?


「私の所にも来るなんてね」


「あのぅ、ところでここ何処です?」


「なんとなく分かるでしょ?あなた死んだの」


全然分かりませんでした。急に殺さないで欲しい。


「えっと、ちなみに死因っていうのは?」


「大きめの自然災害2つに巻き込まれて死んだわ。少しは耐えてたみたいだけど」


あ、結構・・・というかかなり大惨事?それにしても覚えてないな。まぁ、痛いの思い出すよりかはマシかな?

つまりここが天国か。


「それじゃあ一応、最後になんか言うことある?」


うん?あれ?あっけなく消されそうですね?天国なんてなかった。


「ちょっと待ってください!最後ってどういうことです?」


「そのままの意味よ。今から消す」


「え・・・な、なんで消すんです?」


「輪廻転生、的な?」


「えぇ〜・・・ま、待ってください。消す以外になんかないんですか?」


「なくはないけど、消すのが普通だし」


顔色ひとつ変えないで、神様は面倒くさそうに言葉を返してくる。


なんか今すぐにでも消したい雰囲気が伝わって来ましたよ。消されないためには、なんとか説得しなきゃいけないみたいですね。


「いやしかしですよ、自分で言うのもあれですけど私の状況は結構こう・・・特殊?な感じじゃないですか?」


「まぁ、確かに珍しいけど」


「そうでしょうそうでしょう!どうかお願いしますよぉ。若くして死んだ私にこう・・・なんかご慈悲を!」


「・・・運が悪かったとは思うけど、別に貴方だけって訳でもないし」


そっか、自然災害が重なったんだっけ?そりゃ俺みたいに巻き込まれた人は他にもいっぱいいるよな。


「やっぱり、他の巻き込まれた人達もここに来たんですか?」


「あぁ、私の所に来たのは貴方だけよ」


「え?」


「簡単に言うと、貴方が住んでた地球は私の管轄外。今回は一気に大量の人達がこっち側に来たせいで、地球担当のとこの許容量を越えたって感じね」


「それで溢れた私がここに?」


「多分ね。まだ地球に私の影響力が残ってたみたい」


ふむふむなるほど?


「つまりこれは運命ってことですね!」


「は?」


やっと表情を変えてくれた。


「思いがけず溢れた私が、予期せず地球に影響力を持っていた貴方様のところにやって来た。これはもう必然でしょう」


「それは偶然って言うのよ」


「まぁ確かにそうかもしれませんけど、運命には変わりないと思うんですよね!これも何かの縁ですから、お願いします、まだ消さないで!貴方様の為なら何でもしますからぁ!」


一般人の俺に何ができるかはともかく。


「はぁ・・・・・・・・・貴方、約束は守る?」


お?これはワンチャンあるのでは?


「はい!墓場まで持っていきます!」


「そう・・・」


あ、やっべ今の返事絶対おかしいわ。

ま、ほらあれよ、死ぬまで約束は絶対守る的な?

まぁ破ることもあるけど。


「そう、破るのね」


読まれてるぅぅぅ!?

え?心読めるの?


「まぁ、神だし」


なら仕方ない。

いや、それよりも聞いてください。破ると言ってもあれですよ?絶対に守らなきゃいけない約束はちゃんと守りますからね?それに、私って結構義理堅いっていうか、人情があるって言うか、貰った恩は忘れないと言うか。


「わかった、わかったから。後、心読むのにも力使うから普通に喋って」


「はい、すいません普通に喋ります」


「それで、今あなたの過去をざっと見てみたけど・・・」


え?今の一瞬で?どうやって?神様って凄いなぁ。


「ここにプライバシーの権利はないんですね」


「当たり前でしょ。とりあえず、大方問題は無さそうだから、特別に、私の役に立ってもらうことにするわ」


「おぉ、ありがとうございます!それで、私は一体何をすれば?」


「神が力を持つためには、信仰が多く必要なの、何となく分かる?」


「はい!なんとなくわかります!」


「そういう訳だから、貴方には私に対する信仰を広めてもらうことにするわ」


「信者を増やせということですね!」


「そういうこと」


「なるほどなるほど。具体的にどうすれば?」


「当然だけど、ここに居ても意味ないわ。だから、貴方にはどっかの世界に行ってもらうことにするわ」


なるほどね、よく分からないけど。


「理解しました」


「そう、早いわね」


「ええもちろん!」


「それじゃあ、私の影響力が強いところに転生させるわ。そこなら私もある程度干渉できるし、貴方もすぐ死なないだろうし」


「はい!わかりました!」


すぐ死ぬようなとこじゃなくて良かった。もうしばらくは死にたくないね。


「それと、転生する前に貴方に良い物あげるわ」


「良い物ですか?神様の武器です?」


「期待してるところ悪いけど、大した物じゃないわよ。ちょっと称号を与えるだけよ」


「称号ですか?一体どのような称号を頂けるのです?」


「『賢者』とか良さそうね」


「『賢者』!いい響きですね!どのような効果が?」


「ちょっとだけ魔法関連で、それなりに良い感じの才能を得るわ」


うん?なんかすごい微妙だぞ?いやいや待て待て、そんな名前で効果がそんなに微妙なわけ。


「ちょっとだけ?それなりに良い感じの?なんというか、それで賢者名乗れるんですかね?」


「まぁ、あくまで称号だし。なんなら、上位互換の『大賢者』とかあるわよ」


「ちなみに、そちらの方を頂けたりは?」


「悪いけど、私そんなに強い神じゃないのよね」


そうだったのか。まぁでも、俺を拾ってくれただけありがたい。他の強い神様には見捨てられてただろうなぁ俺。


「そうだったんですね。いえ、頂けるだけでもありがたいです」


「まぁ、貴方には前世の記憶があるから、それで何とかしてちょうだい。多分、向こうで2歳位の時には、完全に定着してると思うわ」


そう言うと、彼女は肘をつくことをやめ て姿勢を正した。

すると同時に、俺の周りが白く輝き出す。


うおぉぉ!緊張してきた。


「転生ですか」


「ええ、せっかくだし、貴方に固有魔法でも授けるわ。魔力消費が極端に少なくて、念じるだけで使える凄い代物よ」


なんだろう、もうこれ絶対効果弱いでしょ。


「一応訊いておきますけど、魔法の内容は?」


「なんかすっごい眠くなるわ」


「ふむ、意外と使えそうですね」


「そうでしょ?後、向こうの世界である程度動き回れるようになったら、私を信仰している教会に行くこと。そしたらまた話せるかもね」


「分かりました!しっかり探します!」


「でも、他の神に目移りしたら今度こそ消すから」


「え、あ、はい!決してそのようなことは致しません!」


「じゃあ最後に、何か言い残すことある?」


光がどんどん強くなっていく。もうすぐ転生するのだろうとわかる。

言い残すことかぁ・・・質問じゃなくて?


「そういえば」


「何?」


「まだ、神様の名前教えて貰ってないですよね?」


「あ〜、まだ言ってなかったわね」


光がどんどん強くなる。眩しくて、彼女の姿はよく見えなかった。


「アストライアよ」


その言葉を最後に聴いて、俺は目をつぶった。

意識は一旦、そこで途切れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ