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祖国を追い出された男爵令嬢

「すまなかったっ!」


男爵である父が私に向かって頭を下げてきた




でも甘いよ


オレが許すわけがないじゃない


いままで14年間虐げた分をしっかり償って貰うぞ





というか取り繕うのはもう無理だろうね


だってここは王城の大広間だもの





それも年に一度の建国際


おまけに帝国の使者を始めとした来賓までいる


もう醜聞はどうしようもないだろう





ご愁傷様




・・・いや違うね


やられたらやり返す、倍返しだっ!


だね







もうお分かりだよね


私は転生者だ




転生前は日本に住んでいた


お約束のネット小説愛好者


小説になっちゃおう!を1日3時間読まないと死んでしまう人種


もちろん地の文章からわかるように男だ





・・・男爵令嬢とか言っていなかった?とかここでツッコミを入れた貴方はニュータイプ

 

未来を平気で予測する人間がゴロゴロいるんだよね


感想欄は「ネタバレしてくれるな!」の嵐だったな




・・・メタ視はこれくらいにしておこう




以前は男だった


異世界に転生したら女になっていましたとき





結構大変かも?と思うだろうが生まれた時から女だと結構なんとかなるものなんだよね


というか赤ちゃんの時からだと、もう男だった時のことは思い出せない


・・・男に抱かれるなんてまっぴら御免だけどね(涙)





話を戻そう


異世界なんですけど生活のレベルがお約束の中世なんだよね


おまけに魔法も魔王もいないという世界


・・・神様は何を考えてこの世界を作ったんだと言いたい




世界を救うとか、魔王を倒すとかしないと書籍化どころかブクマすらつかないと思わね?





まあそんな世界なのでネット小説定番のお約束ができた


いわゆる現代常識チート




石鹸作ったくらいで天才とか言われたのには笑えたね





・・・いやさすがにバッチくって必死になって作ったわ


中世の衛生って現代人には無理だった




どこかのネット小説で泣きながら浄化の魔法をかけていたよな?


あの気持ちが分かったね




現代だったらインドとか東南アジアに旅行に行けばいい?


水飲んだら下痢したとかよく聞く話


純粋培養の日本人は綺麗な環境でしか生きられないんだよ


・・・どこのイノセントかよ!って言いたい






もっともチートについては今まで黙っていた


幼少の頃に母を亡くし、後妻が来て、連れ子の妹にまで虐げられる日々


オレだけが一人寂しく自室で食事


だれが教えるかって~の(怒)






もっとも元ボッチの元オタクだよ?


お一人様でも苦にならない


いや逆に隣に人がいた方が安心できないね


・・・ネット小説愛好者は社会的に大丈夫なんだろうか




という訳で嫌なことはスルーしてみた


逃げるのは恥だが役に立つというやつだ


・・・虐げられた恨みだけはぜってー忘れないけどな






という訳で虐げられたオレは12歳になると王国学院に放り込まれた


一緒に暮らしたくないと言われて寮に入れられた訳だ





もちろん学院でも虐められた


親に疎まれた子供なぞ格好のイジメの対象だ




こちらもスルースキルで耐えた


冬に種を蒔くバカはいない、いや・・・鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥、かね?





それに復讐は考えている時が一番楽しいからな@宮〇雪野




とまあ学院では石鹼を作って小金を稼ぎながらデスノートを作っていた


もちろん逃亡資金だ





平民になってこんな貴族社会から抜け出してやる!


それがAプラン


なっちゃおう愛読者の定番だね





・・・もちろんCプランまであるぞ?


ネット小説愛好者たるもの最低3つは逃げ道を作っておくのが常識だ




話を戻そう


Aプランは学院にいるうちに働いて逃亡資金を稼ぐ、だね


平民となった後の逃亡先も確保できれば最高だよね


食堂のウエイトレスとかパン屋が定番だよな





という訳で手始めに石鹸を作った





まずは学院の花壇に菜の花を植えて種を得る


木を蒸し焼きにして炭を作り、燃やして灰を作る


灰の上澄み液と種を潰して得た油を混ぜればあら不思議


石鹸の出来上がり






・・・作るのに半年以上かかった


ネット小説なら数行だというのに(涙)





もちろん途中で妨害にも遭ったぞ?


学院の花壇で菜の花を栽培していたら花が咲いた時点で踏み潰された


・・・お貴族様は偉いとか自分で言っている割には結構酷くね?




おまけに踏み潰された菜の花を見てオレが呆然として姿を見てニヤニヤしていやがったよ


「あ~あ、可哀そ~」


全然可哀そうでない口調で言われたっけ





男爵令嬢風情が目障りだというのが理由だ


自分は何もしないくせに人が何かやると気に障るらしい





・・・転生者でなければ絶対に自殺していたかもしれん


いや転生者でも自殺するかもしれんぞ?


冬の川に飛び込んだりして





とまあすったもんだの末にようやく石鹸ができた訳だ


当初の予定の1/10くらいの量しかできなかったけどな(涙)




出来た石鹸?


自分で使う分を確保した後の残りをニキビに悩む侯爵令嬢様に渡した




若いというのは新陳代謝が激しいということだ


清潔にしていないとニキビなんてすぐにできる


あっという間にできる


そして手で触ると凸凹していて死にたくなる


令嬢アルアルでした





でもすぐに侯爵令嬢と話ができた訳ではない


身分の差があるからな




最初は取り巻きの男爵令嬢に話を持っていったんだがお金を要求された


次の子爵令嬢も、伯爵令嬢も、だ





まあ自分の得にならないことなんて絶対にやらないから当然だ


おかげで今月の食費が無くなった


いや足りなくて借金した




・・・なんかもういいやと思ったけど最後までやり切りました







最初、侯爵令嬢のジンジャー様は効果を疑っていた


男爵令嬢風情が何言ってやがる


そんな態度だった





まあそうだろう


怪しげな物を持ってくる人間を信じるバカはいない






取り巻きの令嬢たちも冷笑していた





だがオレは負けなかった


なにせ効果があることが判っているのだ





「だったらジャスミン様に持っていきますね」


ライバル視している伯爵令嬢の名前を出してみた





いやね侯爵令嬢のジンジャー様と伯爵令嬢のジャスミン様は仲が悪いんだよ


学院の二大派閥と言ってよいだろう




成績とかお茶会とか何かと張り合っている


おかげで学院の雰囲気が悪い悪い




効果があるかもしれないし、ないかもしれない


だけどもしあったのなら?


それをライバルのジャスミン様が得たとしたら?


「本当に見る目がありませんのね?」とか絶対に言いそう、いや絶対に言う


たぶんそんな葛藤があったはず





とりあえず手下の男爵令嬢で人体実験することになった


・・・男爵令嬢は涙目だったね





でも賄賂を贈った相手だったので全然心が痛まなかった


泣く泣く石鹸を顔に塗る男爵令嬢


確か名前はプリムだったっけ?


あれプロム?


まあいいやどうせモブだし(笑)





石鹸を2~3日使った後に男爵令嬢の顔からニキビが消えた


いやマジで若いって凄いね





ニキビって結局は傷なんだよね


だから回復には結構かかるはず


1週間?


2週間?


それくらいかかると思っていた


いくらニキビの原因となっている毛穴の汚れが無くなったからってそれはないだろうと言いたい





でも結果は結果


侯爵令嬢のジンジャー様は飛びついてきた


だって女の子だもの





最後に笑うのはオレだったね






たとえイジメっ子だとしても、いえだからこそ気に入って貰わなければならない


学院での平和がかかっているからな





一度手に入れたものが手に入らなくなった時の絶望は考える以上に効果があるんだよ


気に入って貰ったのでこれから学院にいる間の平和とお金は安泰だ





もっとも侯爵令嬢様は最初は金を出し渋っていたけどな


でもライバルのジャスミン様の名前を出すだけでホイホイ出すようになった





なにせひっきりなしに石鹸をよこせってお誘いがあるからな


「こちらにくれば厚遇するぞ(意訳)」


って感じだ





そりゃ盗られないように必死にもなるってものだ


正しい正しくないの問題ではない


女の意地の問題だ





おかげでジンジャー様と話すための賄賂分はしっかり回収した


なにせ今月分の食費だからな


あ、今後6ヶ月分だった





・・・賄賂を払ったために食事ができません、ですから太っ腹なところを見せて下さいと正直に言った時の沈黙は耳に痛かった


静かというのはあんなに凄いものだと初めて実感したな





つい沈黙に耐えられなくて


「2週間ほど水だけで過ごした」


と言ってしまった





反省も後悔もしていない


だって本当にお腹が減っていたんだから





まあ賄賂を贈った先の男爵令嬢と子爵令嬢と伯爵令嬢は真っ青だったけどな


そこまで酷いとは思ってもみなかっただろう


でもうちのひとの悪意を舐めるなと言いたい





まあこちらはいい


一応同じ派閥になるから穏便に、と恩を売っておいた





でも菜の花を踏み潰した男子生徒達については別だ


やつらのおかげで油が足りなくなったので石鹼の数も大分減った


つまりは手に入るお金が減ったのだ


こちらは絶対に許せん




ニヤニヤ嗤っていたことも含めてしっかり責任を取ってもらった


いややったのは侯爵令嬢様だけどな





侯爵令嬢以下も石鹸の数が減ったことの恨みがある


だから仕返しは大変なことになったね


女子の集団に嫌われた男子生徒に明日はないんだよ





「謝るから許してくれ!、いや許すように口添えをしてくれ!」


と子爵やら男爵の息子たちが頭を下げて泣きついてきた





絶対に許さなかったよ


イジメた方は忘れてもイジメられた方は忘れないんだよ





最後には親まで出てきた





そりゃそうだ


貴族なんて体面が大事


バカな息子たちのバカな行動は笑いの種にはもってこいだ




そちらについては伯爵令嬢様に丸投げした


所詮は男爵令嬢


オレに言われても決定権がないからな






なお踏み潰したバカ達の婚約者は全員がジャスミン様の派閥だったってのもある


嫌味を言う恰好のネタを逃すジンジャー様ではない


・・・女って怖いよな





なにせジャスミン様とジンジャー様はお互いに


「ニキビ跡のデコボコ!」


「デカ女!」


と罵りあう間柄だからな





オレは見れないだろうけど壮絶なバトルがあることだろう


下手に手を出すと火傷しそうだ


逃げておこう




とまあプランAを実行していたら隣国の帝国のお貴族様に目を付けられた


まあそれが第三王子だったという落ちはベタだな





帝国は大国であるが王国と違って実力主義だ


小国である王国うちのくにであっても第三王子様とその使用人をスパイとして送り込むくらいはするだろう


いやそこまでするから大国になれるんだろう


・・・身分を胡坐をかいている王国うちとは大違いだな





という訳で第三王子様から


「面白いから帝国に来い!」


と勧誘された





本当の文句は


「この国にいても幸せになれないだろう」


だったけどな



本当に大きなお世話だ




でも本音は石鹼をよこせだと思う


帝国にも輸出しているけど基本的に王国の女性が消費して足りないから


・・・女って本当に美に対してどん欲だよな









話を戻そう




まさかプランCが浮上してくるとは思わなかった


まあ父親に復讐ざまあができるなら好都合


と言う訳で権力者を利用するプランCに変更した


・・・伯爵令嬢?ただの奴隷で友達じゃないから計画外だ






という訳で父親にざまあしてくれるなら帝国に行くと返事した





そしたら王国の建国際の場で帝国の第三王子が宣言した


「ひどい扱いをしている令嬢を助ける!」






大義名分すぎて王国のメンツ丸つぶれだった





正確には


私が家で虐待されていた


学院で虐められていた


被害者本人が王国に居たくないから帝国に行くと言っている


だね



父親どころか王国にまで喧嘩を売りやがりましたよ




でも第三王子様に糾弾された時の父親の顔は見ものだったね


間抜け顔だった





でもさすがクズ


謝った後、すぐさま親子の情に訴えてきた


・・・あれだけ虐待しておいてよく言うよ、と逆に関心したね





もちろん返事は


「謝っているようですが、何に対してですの?」





「ただの家庭内の意思疎通の不備ではないか~」


猫なで声で言ってきました





話を有耶無耶にした上で、家庭内のもめごとレベルに落とす


人間としてはクズですが、言いくるめる技術に関しては目を見張るものがありますね


このところだけは見習わないといけません


・・・世間は正直とか正義とかで動いてないですからね





「あら、小さく硬いパン1個と具のないスープだけで1日過ごすというのが普通なのですね?私が別邸で食べている最中に本邸で豪華な食事をとっていたというのに?食べていなから小さい身体なのに目障りだ!といって蹴ったり殴ったりするのが意思疎通の不備?ああ靴で踏みつけられたというのもありますね?ああそういえば男爵令嬢からは一度使ってみたかったという理由で鞭で打たれましわ、身体中、ああ真冬に古い毛布一枚で震えていたというのもありましたわね、火の気がまったくなくて本当に寒さに震えましたわ、よく死ななかったものだと思いますわ、そういえばあの時、本邸の煙突からは暖炉の煙が出ていましたわ、さぞ暖かかったことでしょうね」


とりあえず恨みを込めて受けた非道を暴露してみた





・・・女言葉をつかうとおかまになったような気がするんだがそこは我慢した


台無しになるからな




おかげで大成功


周りはドン引きした





そりゃそうだ


実の娘をそこまで虐待するとか知られたらもう貴族としての評判は地に落ちるだろう


今後の夜会とかでの話題のナンバーワンは決まったようなものだ





「な、な、・・・」


男爵様くずは声も出せないほど精神的にダメージを受けたようだった






いままでの10年間の恨みを思い知れ!


やられたらやり返す


倍返しだ!


だね




いや全然やり足りないわ


ちょっとだけスカッとしただけだ


でもまだ終わらないよ?


そのうち気が向いたら追加で追い詰めてやろう






「殿下、こんな国には居たくありませんの、帝国に連れて行っていただけませんか?」


とどめを刺すために帝国の第三王子様にお願いした






・・・もちろん事前に話はしてある


なにせ「可哀そう」などと言って手を差し伸べてきたんだ


お人よしなのか取り込もうとしているのかは判らん


あるいは身体が目当てかもな


でも使えるものは使っちゃうよ


第三王子様はコスパが良さそうだから






「ああここまで酷いとは思わなかった、いや帝国にいては判らないことがあるから世間を見てこいと言われた皇帝陛下に感謝だな」


第三王子様もノリノリで父親を責める言葉を吐いていた






以外とノリが良くてびっくりした


いままで誰も味方がいなかったから


逆にこっちの方がびっくりだね






・・・暗に王国を責めているんだけど気が付くかな~と思っていたんだけど男爵様は気が付いていないようだった






逆に王様の方は気が付いたようで真っ青だった


これからの帝国との交渉ではことあるごとに王国の常識について話題にのるだろう


そして譲歩を強いられる


そんなろくでもない未来が見えているようだった





ちなみにお貴族様の方も同じように顔色が悪かった


自分の子供が学院で男爵令嬢オレをイジメていたからな





今言われていないということは今後どこかで言われるということだ


もちろん誰かの譲歩が必要な交渉の場で、である


貧乏くじを引かされるネタが相手にあるんだ


その日までドキドキの日々が続くだろう



第三王子様万歳だな





こうしてオレの復讐は終わった










いや今後も機会があれば第三王子様を盾に復讐をしまくるつもりだ


イジメられたらイジメ返す


倍返しだ!


だな




ああ、人に復讐するのってなんでこんなに楽しいんだろうな


癖になりそうだ

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