90 金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり④
九十話 金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり④
愛ちゃんやマリアの学校での一面を知った翌日の朝、数日間安静のオレは、進藤さんと横に並びながら学校へと向かう愛ちゃん、マリア、石井さんを玄関まで見送っていた。
「え、進藤さん学校行かないの?」
驚き顔で尋ねてくる石井さんに対し、進藤さんは眉ひとつ動かすことなく頷く。
「な、なんで!?」
「だって私のバッグ、家にあるし。 それに今は色々あって帰りたくないんだよね」
進藤さんもヤンキーということで、石井さんはある程度察したのだろう。「そ、そうなんだ」と答えながらも、進藤さんに軽く耳打ちをした。
「進藤さん、くれぐれも加藤くんと変なことは……」
「いや、しないから。 てか昨日から石井、くどくない?」
三人を見届けた後、オレはゆっくりと朝ごはんという名のお粥を少量食べて、処方されていた薬を飲む。
「加藤、洗濯バサミ足りないんだけどある?」
「あーうん。 洗面所にあると思う」
「りょ。 てか薬、ちゃんと飲んだ?」
「うん、飲んだよ」
「ふーん」
そっけない態度の割に、なんだかんだ心配してくれていて嬉しいよな。
食後もソファーに腰掛けながら安静にしていると、洗濯物を干し終えた進藤さんがスマートフォンを弄りながら隣に腰掛ける。 それからしばらくの目の前で流れていたニュースを二人無言で眺めていたのだが、急に進藤さんは「てかさ」と口を開いた。
「ん、なに?」
「今日の夕方ちょっとだけ家に帰ろうと思うんだけど、また夜来てもいい?」
進藤さんに視線を移すと、進藤さんはスマートフォンを太ももの上に置きながら、真剣な表情でオレを見つめてきている。
「あーうん。 それは全然。 お母さんの許可もらえてるんだったら」
「サンキュ。 今親戚の子……従姉妹が来ててさ。 私のこと心配してるっぽいから遊んであげよーと思って」
「そうなんだ」
「うん」
「ーー……」
「ーー……」
特に話すこともないため再び静寂がオレたちの周囲を包んでいく。
気まずい。 非常に気まずい。
無言テレビタイムも苦痛になったオレは、得意の狸寝入り……寝たふりをして、この状況を乗り切ることに。
目を瞑り、隣に座っている進藤さんの女の子の香りだけに集中していると、オレはまだ病人なんだけどな……。 突然進藤さんが、オレの腕を軽く小突いてきた。
「!?」
驚いたオレは寝たふりをしていたことも忘れてすぐに目を開け視線を向ける。
「起きてんじゃん」
「ご、ごめん。 えっと……何か用かな」
「あのさ、なんで加藤は私に何があったか聞かないわけ? 普通聞くくない?」
ーー……は?
女ってのは本当に分からない生き物だよな。
オレから聞いたら「うるさい」とか言うに決まってるのに、聞かないなら聞かないで「聞け」とか、どんな理不尽だよ。
オレは心底面倒臭いと感じながらも、構ってちゃんモード真っ最中なのであろう進藤さんの相手をしてあげることに。
流れていたテレビを消し、体を進藤さんの方へ向けて話を聞く体勢をとる。
「気にしてたら申し訳ないなって思って聞かなかったんだけど……聞いていいの?」
「いやイケメンかって。 んなことインキャが気にすんな」
余計な一言、さすがはヤンキー。
進藤さん曰く、昨日あんなことになってたのは、数年前から関係の悪かった父親との喧嘩が原因とのこと。
どうせ聞くに足らない……くだらない内容なんだろうなと思いながら耳を傾けていたのだが、進藤さんの口から発せられたそれは、オレが思っていたよりも複雑なものとなっていた。
「昨日もチラッと言ったけど、私には体の弱いお姉ちゃんがいてさ」
「うん」
「まぁもう死んじゃっていないんだけど、あいつ……私の父親ね。 あいつが私の目の前で『死ぬのが逆だったらよかった』とか抜かしやがって」
「うんうん……って、ええええええええええええ!?!?!?!?」
おいおいおい、想像していたものより段違いで重たい話題がきてしまったぞ。
ていうかお姉さん亡くなってたとか……あぁもう、情報量が多すぎるな!!
余程父親からの言葉が心にきていたのか、進藤さんの目にはうっすらと涙。 怒り、絶望……いろんなマイナスの感情が混ざった顔をしながら拳を強く握りしめている。
「それで私はカッとなっちゃって家を……」
「進藤さん」
オレは途中で話を制止。 手を前にかざして小さく首を横に振った。
「なに? まだ話、終わってないんだけど」
「重いし情報量が多すぎるから、もうちょっとゆっくりめに……小出しでお願いします」
◆◇
どうやら進藤さんの姉は、進藤さんが中学生の頃に亡くなったとのこと。
髪が長くて落ち着いていて、まさに大和撫子……理想の姉だったと語る進藤さんの近くで、ちゃっかり盗み聞きしていた御白が『あー、それに似た娘なら家の外におったぞ。 妾の神の波動に怯えて家の中に入ってこれないみたいじゃがな』と笑いながら窓の外を指差す。
『ちなみに今は浮遊霊どもに絡まれておるぞ。 あのくらいの女子、霊相手にもモテモテじゃったわ』
ーー……今は我慢だ。
「そうだったんだ。 お姉さん、病弱だったの?」
「そ。 死ぬ前までよく高熱とか出して、その度に私が看病してたんだよねー。 その時は両親二人とも働いてたから」
「なるほどね。 それでギャルの見た目してるのに、進藤さん面倒見よかったんだ」
「うるさい。 大事なタマちゃん潰すぞ」
「ご、ごめんなさい」
オレは途中で口を挟むことを中断。
視界に入り込んでくる御白を必死で無視しながら、進藤さんの話に本気で耳を集中させることにする。
『なぁ良樹よ。 どうするか? 妾が呼んできてやろうか? 他の浮遊霊共もついてくるかも知れぬが』
「ーー……」
『いや、そもそも妾の存在に怯えて逃げ出すか? はっはっは!! ーー……おい良樹聞いておるか?』
「ーー……」
『良樹ー? そやつの話を聞く前に、まずは妾の話を聞いたほうが話が早いぞー?』
うるせええええええええええええ!!!!!
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