15 異国の銀髪少女⑥
十五話 異国の銀髪少女⑥
時間になり、オレたちは家を出て教会へと到着。
オレと愛ちゃんが見張っている間にマリアが静かに鍵を開け、なんとか第一段階……潜入を成功させた。
「電気、ほんのちょっとだったらカーテン閉めてるし気づかれない。 今、点ける」
マリアが電気を点けたことで先ほどまで真っ暗だった室内が一気にクリアに。
「あー、やっぱりいるか」
数時間前には親玉……悪魔以外は全滅させたんだけどな。
悪魔のその持ち前の負のエネルギーに呼び寄せられてなのか教会内では中級・上級・悪霊たちが勢いよく飛び回っていた。
「んじゃーとりあえずあいつら消すか。 愛ちゃんとマリアは一緒にあれ、お願いできる?」
オレが目配せすると二人は同時に頷きながらリュックに入れていた大量のお札……いや、お札もどきを取り出す。
もちろんそれはオレが先日愛ちゃんのためにいっぱい出した霊力たっぷりお札だ。
「うん。 お兄ちゃん、このお札を建物の外に貼っていけばいいんだよね?」
「そうだね。 そうすればそのお札にはオレの力が入ってて霊が触れたら消えちゃうから、霊たちは安易に近寄れなくなる……結界みたいになって変な邪魔はされないだろうからね」
「分かった! 行こ、マリアちゃん」
「うん」
愛ちゃんに腕を引っ張られるようにして二人は外へ。
その際マリアがオレを心配そうな目で見てきていたことに気づいたので、オレは余裕の笑みを作りながら親指を立てた。
「安心しろマリア。 中のやつらを強制除霊させたくらいではオレの力……霊力はなくならん。 オレ、多分めちゃくちゃあるから」
「そう、ならいい」
ということでまずは下準備……悪魔戦の前段階だ。
オレは愛ちゃんとマリアに教会の周囲に【強制除霊】効果を持つお札を貼ってもらっている間に教会内に飛び回る目障りな悪霊たちを片っ端から消滅させていく。
そしてさすがはオレの強制除霊……だけでなく、愛ちゃんもマリアも優秀だな。 オレが室内の悪霊たちを全滅させたとほぼ同時。 「終わったよー」と愛ちゃんたちも部屋に戻ってきた。
「よし、じゃあやってみるか」
何かあった時のために一番力を持たない愛ちゃんは扉に一番近い後方で待機。
さぁ、悪魔……初めての相手だぜ。
愛ちゃんが後方の柱に身を隠したのを確認したオレは悪魔の隠れている石像に向けて強制除霊を放つ。
しかし結果は……
「んー、無反応か。 すまんが頼んだ、マリア」
「分かった」
オレの隣でマリアが分厚い本を抱えながら石像に向けて十字を切る。
「はじめるっ……」
「ーー……おぉ」
やはり悪魔にはマリア式……海外の方法が通用するんだな。 石像から夕方見た黒い瘴気が溢れ出し、その中心から『誰ダ』と何回聞いても慣れることはなさそうな、禍々しくもおぞましい声が部屋全体に響き渡った。
「ちょっと色々あってな。 悪いけど可愛いは正義……そうではない悪には消えてもらうぞ」
「そう。 可愛いは正g……いや良樹、それ、違う。 悪魔そのものが元々悪い」
まったく、せっかくマリアの緊張を解こうと思ってただけなんだけどな。 冗談の通じないロリッ娘だぜ。
だけどそれもまた可愛い……
マリアが気を取り直して「今日で悪魔には消えてもらう」と堂々と宣言する。
するとそれに対して石像の中……悪魔の反応はまるで子供の煽りを受けている大人そのもの。 『ふ……フハハハ!!! 前に我ヲ消そウとして、力及ばズだったコトを忘れたカ!!!』と余裕たっぷりの笑いがマリアへと向けられた。
「よし、マリア。 あいつは完全に油断してる。 一気にやってやれ」
「うん」
そう、あいつ……悪魔はまだ知らない。
今のマリアにはオレという超大容量の霊力タンクがついているということをな。
オレはそっとマリアの背中に手を添えて霊力の放出を開始。
マリアは再び十字を切って祈り始め、それとほぼ同時に石像の下に巨大な光の円が出現……像全体を包み込み、目を開けているのもやっとなほどに眩い光りを放ちだす。
『なっ……ナンだこの「力」は……!! 前回のソレとはマルで違ウ……!! コレは一体……グフゥ!!!』
光の中、悪魔の呻き声が聞こえてくる。
これは……効いてるってことだよな。 マリアも小声ではあるが「こ、こんな大きな力、初めて……」と呟いている。
「マリア、気を緩めるなよ」
「うん、マリア……悪魔、倒す」
マリアはこくりと頷くと更に霊力を込めて詰めにかかる。
それにより光の円は更に巨大化……部屋全体が真っ白になるほどに成長し、中からは悪魔の先ほど以上の苦痛の声が一層増して響き渡った。
◆◇
悪魔の声が聞こえなくなってからも、しばらくは攻撃の手を緩めなかったマリア。
するとこれは……勝利演出みたいなものなのだろうか。 やがて石像に大きく亀裂が入り、頭の方から割れた欠けらが床へと大きな音を立てて崩れ落ちていく。
「や、やった?」
マリアがオレに振り返りながら確認を入れてくる。
「ーー……どうだろ、光でまったく見えないな」
「確かにそう。 一旦止める」
「あぁ」
マリアが力を止めるとオレたちの視界に映ったのは、見るも無惨な……胸部あたりから上が完全に崩れ落ちた石像。 一見すると完全に倒しきったように見えたのだが……
「いや、まだ終わってなくないか?」
「うん。 マリアも変な感じ……気配が消えてない」
オレとマリアは互いに顔を見合わすと最後力を込めようという話に。
しかしそれよりも先……朽ちかけた石像が縦に真っ二つに割れて大量の瘴気が放出される。 その後それは石像上部に集まり形を成しはじめ、そこからずっとその身を隠していた存在……悪魔が姿を現した。
「な、なんだあの見た目は。 あれが悪魔……なのか?」
「そう」
「初見だ……。 本当に日本にいる悪霊たちとは見た目からして違うな」
オレの瞳に映る悪魔……そいつはまるで牛のような顔で筋肉隆々の体、黒い皮膚。 背中には巨大なコウモリのような羽が生えており、目を真っ赤に光らせたそれは全てを絶望に陥れるような……耳を抑えていないと鼓膜が破れるかもと思わせるほどの雄叫びをあげた。
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◆一話の冒頭に表紙絵書いて挿れました!!
表紙絵はラフな感じではないので、よろしければ覗いてやってください!!