14 異国の銀髪少女⑤
十四話 異国の銀髪少女⑤
夜までまだ結構な時間があるため、マリアを自宅へと連れ帰ったオレ。
「ただいまー」
玄関の扉を開けると音を敏感に察知した愛ちゃんが可愛くリビングから顔を出し、満面の笑みを浮かべながらオレのもとへと駆け寄って来た。
「お兄ちゃーーん!! おかえりなさーー……え?」
オレの後ろにいたマリアを見た途端に愛ちゃんの足が止まる。
しかしそんな愛ちゃんの様子を見て察したのか、マリアはオレの前に移動するなり丁寧に頭を下げた。
「こんばんは。 マリア。 よろしく」
「え? あっ……こ、こんばんは。 えっと……愛、です?」
愛ちゃんがオレに助けを求めるように見上げてくる。
可愛い。 本当に可愛い。
「大丈夫。 マリア、この人の彼女でもなんでもない」
「えっと……え、そうなの?」
「そう。 逆に考えてみてほしい。 この人がもしマリアのことを狙ってるのだとしたら、それはもうロリコン」
「ロリコン?」
言葉の意味を知らず首を傾げている愛ちゃんの前でオレは心に大ダメージ。
続けてマリアがロリコンとは何かを教えようとしていたのだが、このままでは愛ちゃんがオレのことを誤解してしまう。 オレは無理やり話を変えて中断させてリビングへと向かった。
「ロリコンっていうのは小ちゃな女の子に欲情するアメリカじゃかなり重大な……」
「ああああああ!!! 愛ちゃん、ほら、今朝低級霊を除霊したの、このマリアだったんだよ!!」
「えええええ!? そうなの!?!?」
「そうそう!! だからほら、詳しく話を聞きたいでしょ!? こんなところ……玄関で立ってないでリビングに行こう!!!」
「うんっ!!」
◆◇
まずはマリアをお風呂に入れるため、タイマーをセット。
お風呂が沸くまでの間少し時間があったので、オレはそういえば……と自己紹介をすることにした。
「言ってなかったよな。 オレは……」
「知ってる」
マリアがオレの言葉を遮りながら頷く。
「え?」
「あなたは良樹。 今日教会の前で……お友達があなたのことをそう呼んでた」
「あ、なるほど……」
物覚えのいい子だな。
だからこんなにも日本語も流暢……上手なのか。
ともあれ苗字までは分からないとのことなのでオレは一応自己紹介を続行。
「加藤良樹。 良樹呼びでいいよ。 よろしく」と声をかけると、理想の妹・礼儀正しい愛ちゃんも「桜井愛です! 私は愛って呼んでほしいな」と続けて自己紹介、頭を下げた。
「良樹に愛。 よろしく。 マリアは、マリア・ムーア。 マリアでいい」
別に自己紹介といってもそこまで聞くこともないからな。
オレは一応のロリコン疑惑を払拭するため、マリアに許可をもらった上で愛ちゃんにどうしてマリアをウチに連れて来たのかを説明。
すると愛ちゃんも『孤独』という面では一緒だったからだろうな。 マリアの手を握りしめると「寂しいのわかるよ、大変だったね」と優しく声をかけた。
「愛、マリアの気持ち、分かるの? なんで?」
「私ね、パパとママ事故で天国にいっちゃったの」
「そう。 聞いちゃいけないこと聞いた。 ごめんなさい」
「ううん、大丈夫だよ!! 私にはお兄ちゃんがいるから!! お兄ちゃんがいなかったら私はずっと泣いてたと思う……だけど、それくらい悲しかった私をお兄ちゃんは受け入れてくれたんだもん。 だから、気にしないで!!!」
愛ちゃん!!!!!
オレが愛ちゃんの言葉に感動していると、そんな愛ちゃんと目が合う。
そこで愛ちゃんはオレの方を向いたまま口を開いたのだが……その内容はとんでもないものだった。
「えっと、それでお兄ちゃんは、夜にマリアちゃんと一緒にその教会に行くんだよね? あくま……? を倒しに」
「そうだよ」
「私も行っていい?」
「え」
愛ちゃんが上目遣いで擦り寄ってくる。
「あ、愛ちゃん?」
「私も行きたいな」
「いやでも今回の相手は悪魔だから、本当に何が起こるか分からないんだけど……」
「お兄ちゃんがくれたお札持って振り回してるだけでもいいからー」
「あー……それならアリかもね。 変に霊が集まって来ても大変だし、愛ちゃんには周囲にそのお札を貼ってもらって結界的なものを作るのもいいかも」
「え、やったぁー!!!」
こうして急遽ではあるが、猫の手も借りたいという理由から愛ちゃんの参戦が決定。
これって見方によってはかなり熱い展開だよな。 愛ちゃんは現在見習いではあるが、一応は巫女。 そしてマリアはシスター。
巫女とシスターの共闘ってことは……
巫女×シスター=強い!! 可愛い!!!
うおおおおおおおおお!!!!
最高すぎるーーーーー!!!!!!
オレが脳内の尊さ計算式でテンションを上げていると、脱衣所の方からお風呂完了のメロディが流れてくる。
そこからマリアをお風呂場まで送り、次はお腹を満たさないとということで、スマートフォンを取り出してピザの注文を始めた。
「え、ピザ!? お兄ちゃん、今日ピザなの!?」
愛ちゃんが目を光らせながらスマートフォンの画面を覗き込んでくる。
「うん。 ほら、マリアってアメリカ育ちだろ? だったらピザの方が馴染みあって好きなんじゃないかなって」
「ほんとだー!! お兄ちゃん優しい、お兄ちゃん大好きー!!!」
「でっへっへ」
なんか初めて妹の前でかっこいいところ……というか、頼もしい姿を見せれた気がするぜ。
その後、優秀なスタッフたちのおかげでマリアがお風呂から上がるよりも少し先にピザが到着。 マリアが途中で買ったワンピースに着替えて戻って来た頃には、すでにパーティーの準備は完了。 「お腹すいたー!!」とオレたちは席に着いた。
「ほら、マリアも来い。 お腹空いただろ」
大きく目を見開き立ち尽くしていたマリアに声をかけると、マリアは「ーー……マリアも、いいの?」と信じられないといった表情をオレに向けてくる。 一体今までどんな質素な食生活を送ってきていたんだ。
「当然だろ。 てかマリアのために注文したと言っても過言ではない。 ね、愛ちゃん」
「うん!! ほらマリアちゃん、早く食べよ!!」
オレからバトンを受け取った愛ちゃんが明るくマリアに微笑みかける。
そしてそのシュートは見事マリアの心にゴールを決めたようで、マリアは少し戸惑いながらも愛ちゃんの隣へ。 「ありがとう……」とオレたちに頭を下げ、いざパーティータイムが幕を開けたのだった。
「ねぇお兄ちゃん、この緑のソースってなに?」
「あー、それはデスソース……やめといた方が」
「ですそーすー? マリアちゃんはこれ知ってる?」
「知ってる。 マリア、それをちょっと付けて食べるのが好きだった」
「へぇー、そうなんだ。 じゃあ私もちょっとだけ付けてーー……」
その数秒後、とんでもない叫び声がリビング中に木霊したのは言うまでもない。
◆◇
教会へと赴く時間は夜の八時予定。
まだ時間に余裕があるためソファーでくつろいでいると、やはりオレの目は正しかったな……オレチョイスの可愛いワンピースを着たマリアがオレの目の前に立った。
「ん、どうしたマリア」
見上げると何か言いたげな表情。
もしかして時間が近づくにつれて怖くなったのだろうか。
「ーー……愛は?」
「愛ちゃん? 愛ちゃんだったら部屋で宿題でもしてると思うけど、どうした? 用があるなら呼んでくるけど」
「いや、いい。 むしろ都合がいい」
マリアは静かに首を左右に振るとオレの隣に。
しかしその後何も口にしなかったことからこれは甘えたいのかなと察し、「えっと……甘えたいならいいぞ?」と心臓を高鳴らせながら両手を開いたのだが……
「違う」
残念なことに違っていたようで、少し危険を感じたのかマリアが数センチだけオレから距離をとる。
ただ何も言わないマリアにも非があるよな。
オレはマリアに「いや声に出さないと何も分からないぞ」と言い訳。 するとマリアはワンピースの裾をモジモジと押さえながら、顔を赤らめてオレを見てきた。
「良樹」
「ん?」
「ーー……その、ない」
「なにが」
「パンツ」
「ーー……え」
「マリア、パンツも一緒に洗っちゃったから、今なにも履いてない。 スースーする」
「な、ななな、なにいいいいいいいいい!?!?!?!?!?」
小学生ゆえにまだそこまで羞恥心がない……というよりもパンツを見られる方が恥ずかしさゲージ的に上なのだろうか。
マリアは証拠と言わんばかりにスカートをたくし上げ、「ほら」とオレに見せてくる。
「!!!!!!」
もちろんオレの視線はスカートの中……楽園へ。
そこにはまだ汚れを知らない……まだ誰も踏み入っていない神聖な大地が広がっていた。
「お……おおおおお」
実際に見るのは愛ちゃん以来だろうか。
オレがしばらくの間その景色を凝視していると、マリアが若干恥ずかしそうにしながらゆっくりと裾を下げる。
「わ、分かった?」
「お、おう」
あ、もしかしてそれで愛ちゃんのパンツを貸して欲しいという用件なのだろうか。 ただ『パンツ貸して』と直接言うのは恥ずかしくてわざわざ遠回しにこんな。
「よし分かった。 じゃあマリア、行くぞ」
「え。 ど、どこに」
「愛ちゃんのところだよ」
「愛の?」
「あぁ。 オレが愛ちゃんにパンツ貸してもらうよう頼んでやる。 そしたらマリアも恥ずかしくないだろう?」
「いや、違う良樹。 そうじゃない。 ただマリアは今干してるパンツが時間までに乾くか聞こうとしただけで……それで間に合わなかったら乾くまで待ってもらおうって思っただけで」
ほう、言い訳ほどに恥ずかしいのか。 可愛いやつめ。
「気にするな、マリアは後ろにいるだけでいい。 ただ……どのパンツを履きたいかまではオレは決めないからそこは愛ちゃんと相談してくれな。 じゃあ行くぞ」
「いやだから……」
まったく。 困った時に頼ってくるなんて、本当マリアも愛ちゃん同様に妹属性が強い……最高だぜ。
オレはマリアの手を引きながら二階にある愛ちゃんの部屋へ。
数回ノックして扉を開けると、これが兄の背中だとマリアに見せつけるように愛ちゃんに頭を下げた。
「えぇ? どうしたのお兄ちゃん。 マリアちゃんまで」
宿題中の愛ちゃんが頭上にはてなマークを浮かばせて、オレたちに視線を向けてくる。
「愛ちゃん!!!」
「は、はい」
「パンツ見せて!!!」
「え、ええええええええ!?!?!?!!?」
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