132 突然の別れ
百三十二話 突然の別れ
オレはただ、マリアのことを考えて、マリア父を家に泊まらせることを提案しただけなのに。
「ーー……え、ガチ? マリアのお父さん、本当にマリアを連れて帰るって?」
「うん」
「なんで? ここじゃ修行にならないからって言ってたらしいけどさ、逆に今、ここ以上に修行環境がいいところないだろ」
実際そうだよな?
仮にすごい霊能者が向こうにいたとして、その人に教えを請うとしても、こっちには実際の霊……それも霊カーストの中でも確実に上位に位置するであろう神がいるんだぞ?
人に教えてもらうよりも、神様に教えてもらったほうがかなり効率がいいし、何か有事があった際……マリアの身に危険が及んだとしても、神様といた方が比べ物にならないくらい安全なはずだ。
オレがそうマリアに尋ねてみるも、マリアは首を縦に振らず。
「パパには何を言っても無駄」と小さく呟いた。
「えええ、いや、一応オレが今言ったことを聞いてみれくれよ。 納得するはずなんだよ普通は」
「だめ。 パパ、完全にメリッサや、みぃのこと、悪者だと思ってる。 あとパパは頑固だから、絶対に考えは変えない」
「ーー……まじ?」
「うん。 でもマリアは……アメリカに帰るよりも、ここにいたい」
マリアが若干潤んだ瞳でオレを見上げると同時。 マリア父がマリアの肩に手を添える。
「パパ……」
「××」
「ううん、マリアは……できるならここに……」
「××。 ×××」
「ーー……はい。 パパ」
マリアの返答を聞いたマリア父はスマートフォンを取り出し、どこかへ電話をかけているのかスマートフォンを耳に当てながら家の外へ。 その後マリアから、マリア父と近々アメリカに帰ることになったことを聞かされた。
「え……帰る? アメリカに? でもマリアはウチにいたいって……」
「言った。 けど、パパが、『ママも心配してるよ』って。 マリア、良樹や愛たちのこと大好きだけど、家族のことも、大好き。 一度、ママを安心させてくる」
「ーー……そうか」
「うん。 アメリカ帰っても、またすぐに、こっちに戻してくれるようお願いしてみるから」
「分かった」
いつマリアたちが帰国するのだろうと考えていると、それは本当に唐突。
マリア父は部屋に戻ってくるなり、オレに『サンキュー』と一言。 その後、マリアの手を引いて玄関へと向かっていく。
「パ、パパ? どこ……行く?」
「××ー!」
「え、今日はホテル予約したから、明日の夜の飛行機……?」
え。
「お、おいマリア」
「パパ、ちょっと待って。 マリア、まだ良樹や愛に……!」
マリアが言葉を言い終えるよりも早く、マリアの体は玄関の外へ。 言葉を遮るように、扉がパタリと閉められた。
『の、のう良樹、マリアはどこへ行くのじゃ?』
『うん? ヨッシー? どうしたの?』
御白とメリッサが何やら不思議そうにオレに話しかけていたが、絶賛動揺中のオレの耳には届いておらず。
我に戻ったのは数分後で、オレが真っ先に向かった先は、愛ちゃんの部屋だった。
「あ、愛ちゃん!! 大変なんだ!! マリアが……!」
ーー……!!!
扉を開けて目に入ったのは、カーテンを閉め切った、薄暗い部屋の中で机の前に静かに座っていた愛ちゃんの姿。
その瞳からは一筋の涙がこぼれ落ちていた。
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