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130 和解


 百三十話  和解




 家に襲撃してきた外国人のオッサンがマリアの父かもとのことで、流石に無いだろうと思いながらも警察署へと向かったオレとマリア。

 しかし結果、そのオッサンはガチのマリアの父だったため、オレはどう接すればいいのか分からなくなっていた。



 ◆◇



 小時間なら面会室での会話が可能らしく、それ専用の部屋へと入れられたオレたち。

 ガラス越しにオレやマリアと対面するなり、オッサンは最初マリアと会話を交わす。 その後そのままのテンションの流暢な外国語で、早口でオレに何かを伝え出した。



 ーー……うん、何言ってるのかさっぱり分からん。



 オレが無表情のまま固まっていると、マリアがオレの袖を引っ張りながら口を開く。



「良樹。 パパ、良樹にごめんなさいって言ってる」


「ごめんなさい?」


「そう。 パパ、良樹がマリアを誘拐したって思ってたって」


「ーー……は?」



 マリアの通訳を聞いてオレは驚愕する。 

 どうしてそうなるに至ったかを聞いてもらっらところ、どれだけオレに迷惑を掛ければ済むんだろうな。 その勘違いの原因も、最近ラブブレで悪魔商法を復活させようとしていた……あの教会ババァが関係していたのだ。



「おいマジか、またババァか」


「そうらしい」



 どうやらマリアの父は、マリアの頑張りを確認するために、マリアには内緒で来日。 しかしそういえばマリアがどこで修行をしているのかを聞き忘れていたため、最初にマリアをお願いしたババァ宅を訪問したらしい。



「いやでもあのババァ捕まったよな。 放火の罪で」


「そう。 でもパパが聞いたのはそれより前だって」


「そうなのか?」


「五日くらい前って言ってた。 そこでパパ、オバさんから、『マリアが誘拐された。 だからどこにいるのかも分からない』って嘘つかれた」


「いやそれ苦しい言い訳じゃないか? だってマリア、ウチに来るってなった時電話してたよな」


「してた。 でもパパ、それも、良樹に言わされてたって勘違いした」


「ーー……どんな脳内変換してんだよ」



 ババァからマリアが誘拐されたと聞いたマリア父は、それからしらみ潰しに近くの教会を訪問。 マリアの写真を見せながら聞き回っていたところ、とある教会の関係者が『それっぽい女の子を見た』と証言……更に聞き込みを行っていると、近所の誰かがウチを指差した……とのことだった。



「おい誰だそいつは。 近所との繋がりがないから誰だか分からんが……一言文句言いたいな」



 顔の分からない誰かに苛立ちを覚えていると、オレと同じ感情なのであろうマリアがオレを見合えながら大きく首を縦に振る。



「それはマリアも同じ気持ち。 そのせいで良樹が大変な目にあった。 軽く教えるとか、プライバシーの侵害」


「ほうマリア、難しい単語覚えてるじゃないか」


「うん。 夏休み前に、舞が言ってた。 ネットの人と会うのはやめよう、個人情報聞かれても、教えないようにって」


「なるほどな。 でもそうか、じゃああの人は、マリアを救おうとしてウチに突撃して来たわけだな」



 ぶっちゃけオレからしたらただただ迷惑だっただけなのだが、子を思う親の気持ちもわからなくはない。 しかも幼い娘が一人異国の地で頑張ってるんだからな。 心配しない親はいないだろう。


 

「じゃあ……もうあの人、マリアのパパは、オレに敵意はないんだな?」


「ない。 本当に悪いことをしてごめんなさいって言ってる」


「そうなのか?」


「そう。 あとは、マリアをここまで幸せに暮らさせてくれてありがとうって」


「ほう」



 その後も何度かマリアを挟んでマリア父と会話をしたのだが、確かにオレへの敵意は完全に無くなっている様子。 安心したオレは被害を取り下げ、マリア父は何の罪にも問われることなく釈放されることとなった。



「ーー……あ、でもあれだぞ。 玄関の修理は頼むって伝えてくれ」


「それもパパ言ってた。 最新オートロックの機能付きで弁償するって」


「い、いいのか? 流石に高くつきそうだけど」


「パパ、悪魔祓いで稼いでる。 お金持ち」


「なるほど頼んだ」



 ◆◇



 その後オレたちはマリア父を引き連れながら、警察署を後に。

 警察署の敷地を出たところで、オレは視線をマリアの父へと移した。



「×××ー?」



 あー……やっぱり英語はさっぱりだ。 何言ってるのかわからん。



「どうした、良樹」


「あぁ。 ちょっとマリアに聞いてほしいことがあってだな」


「聞いてほしいこと? 何?」



 オレはマリアに「今夜ウチに泊まっていくか聞いてくれ」と通訳をお願い。 それを聞いたマリアは目を輝かせながらマリア父の前へ。 伝言を聞いたマリア父は泣いて喜び、オレに熱い抱擁を交わしてきたのだった。



「サンキューー!!! ×××ーーー!!!」


「ぎゃあああああああ!!! 汗が……加齢臭が……やめろおおおおおおおおお!!!!!」


「良樹、マリアからもありがとう」


「ん、ああ!! 分かった!! 分かったからお前のパパをオレから離せえええええええ!!!」



 この時オレは、マリアがほんの一夜だけでも親に甘えられたらいいなくらいにか考えていなかったのだが……このオレの選択がまさかあんな結果を生んでしまうなんて。




お読みいただきましてありがとうございます!!

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