129 正体
百二十九話 正体
突如家に押し入ってきた外国人男性が警察官たちに連行されていってからしばらく。 何事もなかったかのように愛ちゃんやマリア、同行してくれていた御白、メリッサが家に帰ってきた。
「ただいまお兄ちゃん……って、わわ、その傷どうしたの!?」
帰宅して早々、愛ちゃんがオレの口元に出来ていた傷を発見。 慌てた様子で駆け寄ってくる。
「いやそのえっと……」
「もしかして、前の事故みたいに誰かにやられた?」
「!!」
一瞬ではあったが、愛ちゃんの瞳から光が消える。
それを見逃さなかったオレは、すぐに事実を捏造。 階段で滑って体勢を崩してしまい、角に顔をぶつけたことをなんとか信じてもらえるように熱弁した。
「え、そうなの?」
「そうそう。 だからこの傷は誰にやられたとかじゃなくて……!」
しかしこういう時に限って、うまくいかないんだよなぁ。
オレが必死に愛ちゃんに信じ込ませていると、先ほどの警察官が複数人来訪。「何があったのかを詳しく聞きたい」と尋ねられ、愛ちゃんの瞳から再び光が消える。
「ねぇお兄ちゃん、今のどういうこと?」
「ーー……」
ここは一人にさせない方が良さそうだな。
オレが警察官たちとの話の場に、愛ちゃんも同席させることに。
それが幸いしてなのか、愛ちゃんは以前のように暴走せず。 ただただじっと、オレが話している内容を耳に入れ、その男の特徴をブツブツと繰り返していた。
「外国人……男の人……大きめの体格……、お兄ちゃんを……襲った……」
ひ、ひええええええええええええ!!!!
◆◇
それは警察官たちが家を出てしばらく。
オレが気を取り直して夕食の準備をしている時だった。
「ねぇ良樹、愛がさっきからずっと変。 マリア、何かする?」
マリアがオレの服の袖を引っ張り、小声で尋ねてくる。
まな板からマリアへ視線を移すと、マリアが心配そうな表情で、オレを見上げていた。
「んー、そうだな。 気分転換になるかは分からないけど、悪魔祓いの方法とかもっと詳しく教えてあげたら……意識がそっちに移ったりしないかな」
「なるほど。 ありかも。 夜にでも、やってみる」
「おう頼んだ」
まったく……本当にいいやつだよな、マリアは。
オレはマリアの頭をワシャワシャと撫で、「ありがとう」と伝える。
続けて「それと今日は色々あったから……今度またオレにも悪魔祓い教えてくれな」とお願いしていると、リビングの方から愛ちゃんの声が聞こえてきた。
「そう。 金髪でふっくら体型の外国の男の人。 浮遊霊さんに案内してもらえるから、見つけたらその人の魂、壊して来てくれる?」
『主人の仰せのままに』
ーー……!?!?
振り返ってみると、愛ちゃんの目の前にはあの狛犬。
ちょうど狛犬が愛ちゃんに背をむけ、与えられたミッションに向かおうとしているところだった。
「うおああああああ!!! 愛ちゃん、ちょっと待ったああああああ!!!」
オレは料理道具を台の上へ雑に置くと、慌てて愛ちゃんのもとへ。
しかしオレよりも先に反応していたマリアが既に愛ちゃんの腕を掴んでおり、「愛、ちょっと待って」と小さく首を横に振っていた。
「マリアちゃん……どうして?」
マリアの手の上に更に手を被せながら、愛ちゃんが静かに問いかける。
「愛、ちょっと待ってほしい。 マリア、気になることがある」
「気になること? そんなのどうでもいいよ。 お兄ちゃんを殴ったおじさん……私、許せない」
「そのおじさんのこと。 一日だけ、マリアに時間ほしい」
「なんで?」
ん、なんだ?
普通に止めるだけかと思っていたら、何やらマリアには理由有りの様子。 疑問に思い話しかけてみると、マリアの口からとんでもない発言が出て来たのだった。
「良樹」
「ん? どうしたマリア」
「もしかしたらその外国人のおじさん、マリアのパパかもしれない」
ーー……。
「は?」
「もしそれが本当にマリアのパパだったら、パパ、マリアのこと、迎えにきた?」
「ーー……え?」
えええええええええええええええ!?!?!?
早速オレは翌日、マリアと共に警察署を訪ねてみることに。
すると、なんてこった……オッサンの顔をみるなり、マリアの口から出た言葉は「パパ……」だった。
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年末……やること多くて大変ですね 笑