127 人は本当に怖い!
百二十七話 人は本当に怖い!
な、なんだなんだアアアアア!?!?
玄関を開けた先にいたのは見ず知らずの外国人男性。 そいつに殴られ吹っ飛ばされたオレは、一瞬頭を真っ白にしながらもすぐに脳を回転させた。
御白もメリッサも、外出している愛ちゃんたちを守っているためここにはいない。 というよりも、そもそもオレの目の前にいるのは人間だ。 だったら……
「みんなああああ!!! 頼む、あいつに憑依して時間を稼いでくれえええええ!!!」
そう、霊相手ならオレの方が基本的に有利ではあるが、それが人間……しかも体格マッチョの外国人相手にオレが敵うはずがない。
だからこそオレは、一番仲のよくて信頼できる浮遊霊たちに助けを求める。 ここは浮遊霊たちに憑依させて時間を稼ぎ、一時的な金縛り状態にしている間に縄か何かで拘束するしか方法はないんだ。
『呼んだか!』
『上からこっそりこのオッサン見てたけど、なんか嫌な予感してたんだよな!』
『近くでゴーストトークしてて正解だったぜ!!』
オレの声が聞こえたのか浮遊霊たちが一斉に登場。『任せろやああああ!!!』とやる気満々で外国人男性に突っ込んでいった。
ーー……のだが。
「××ーー!! ソンナノ、効キマセンーー!!!」
「!?」
『『『!?!?!?』』』
こいつ……霊が視えているのか!?
男性はすぐに体の向きを変え、自身に突っ込んできている浮遊霊たちに向かって手をかざす。
『なんだこいつ!! 良樹の強制除霊と同じ体勢取りやがったぞ!!』
『んなわけあるか! あんなチート技を撃てるのは良樹だけ……ハッタリだ!!』
『俺が一番憑依ももらうぜえええええ!!!』
浮遊霊たちは一切怯えずに突撃しているが、こいつ……オッサンも仮に霊を除霊出来る人間だとしたら、浮遊霊たちが危ない。
「ーー……っ! 念の為だけど、間に合え!!」
オレは以前マリアにも使ったことのある、あの方法を行使。 オッサンの力を相殺させるべく、浮遊霊に向けた手のひらに強制除霊を撃ち込んだ。
「ーー……××? ナニカ、シマシタカ?」
「!!!」
全然顔色を変えていないことから、オレの今の行動が無意味だったことは理解出来る。
男性は口角をニヤリと上げると、自身の足元を中心にマリアのと似た光の円を展開。 気づけば彼の背後には天使の翼のようなものを生やした白い靄のようなものがおり、それは堂々と空中に浮かんでいた。
「なんだ……あれは」
試しに今度は白い靄に撃ち込んでみるも、結果は何も変わらず。
それを見た男性は更に得意げな顔になり、外国人特有のカタコトな日本語で、まるでオレを嘲笑うかのように、自慢げに語り出した。
「ナニモ、効キマセーン。 It's my angel デース!!」
「イツマイエン……何言ってんのか分からんぞ!!」
オッサンが浮遊霊たちを指差すと、白い靄は、その翼を羽ばたかせて高く飛翔する。
『ちょ、やばくねーかあれ!!』
『確かに!! 初めてマリアちゃんと出会った時の絶体絶命感を思い出すぜ!!』
『みんなーー!! 中断だアアアアア!!!!』
命の危機を感じた浮遊霊たちはすぐに突撃を中断させて方向転換。 標的にされないよう、四方八方へと散らばっていく。
『うおおおおおお!!!! あいつヤベェ追ってきてるぞ!! 生きてまた会おうみんなああああああ!!! 俺ら死んでるけどーー!!!』
『良樹すまん!! あの白いやつから感じる力がかなりおっかねぇ!!! 落ち着くまで逃げるぜ!!!』
『マリアちゃんの比じゃねえぞこれええええええ!!!!』
「××ーー!! 逃ガスナーー!!」
男性は白い靄に追撃の指示を出すも、日頃からマリアや愛ちゃんの除霊練習の相手になっていた経験が活きたのだろう。 浮遊霊たちは上手く靄からの攻撃・追撃をすり抜けて逃亡に成功。 オッサンは舌打ちをしながら浮遊霊たちの逃げていった方向を見つめていたのだが、オレはそこにチャンスを見出した。
「っしゃああああ!!! ここじゃあああああ!!」
今までやったことも、したいと思ったこともなかったのだが、オレは御白が龍神にしていたドロップキックを見よう見真似でオッサンにお見舞い。 オッサンが玄関の外に飛び出し尻餅をついたのを確認して、すかさず扉を閉めた。
「ーー……っはぁ、はぁ、なんだったんだあいつは!!」
扉の外からは再び男性の怒号。 このままでは壊れるのではないかと思われるほどに、勢いよく扉を叩いてくる。
「××ーー!!! ×××ーー!!! 出テキナサーイ!!」
「だああああ、もう!! なんなんだよお前!! 勘弁してくれええええ!!!」
御白が言ってた悪魔少女かと思ったら、なんで外国人のおっさんなんだよ!!!
オレは施錠した玄関の内側から更に背中で押仕込んだ体勢で、大きくため息。
そしてここで、とても当たり前なことにようやく気がついたのだ。
「ーー……てかあれじゃね。 こういう時にこそ」
おっさんの怒号を背に、オレはポケットからスマートフォンを取り出す。
「えっと……なんだったっけかな。 1・1・9番じゃなくて、1・1……」
それから間も無く。
けたたましい正義のサイレン音と共に、複数の警察官が家の前に到着。 数と大人の力でなんとか男性を確保、連行して行ってくれたのだった。
な、なんだったんだアイツは。
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