126 襲撃者
百二十六話 襲撃者
以前、マリアを肉体的・精神的に追い込んでいたババァが、まさかのラブブレ製造者だったなんてな。 それを見た時は本当にあのババァは懲りないなーくらいにしか思っていなかったのだが。
報道を見た日の夜、オレは御白から信じられないことを聞かされてしまったんだ。
「ーー……それマジ?」
『あぁ、おおマジじゃ』
「えええ……」
皆が寝静まり誰もいなくなったリビング内、オレは絶望からその場で崩れ落ちる。
まさか……まさかあの以前感じた最悪な気配の犯人が悪魔で、そいつがオレたちに宣戦布告してきたなんて。
『一応良樹の耳にも入れておこうと思うてな。 愛やマリアに伝えるかどうかは、良樹に任せる』
「なんで?」
『なんてったってあの二人は絶賛夏休みを満喫中じゃろ? 余計な不安を抱かせるのも酷というものじゃ』
ーー……いや、オレはいいのかよ。
ちなみにその悪魔の見た目を聞いてみたところ、御白の口からは予想外の情報が。
その悪魔は今までのそれらとは違って少女の姿をしており、幼い口調ながらも大人びた顔立ちをしているとのこと。 そして一番分かりやすい特徴として、メリッサと似た悪魔の羽を生やしていることを挙げた。
「えええ、女の子なの!?」
『そうじゃ』
「ーー……それ、強いのか?」
『何を言っておる。 妾がここまで警戒しておるのじゃ。 それで察するじゃろ』
「な、なるほど。 それはそうか」
続けて「その悪魔少女と暴走愛ちゃんのどっちが手強いか」を聞いてみたところ、御白の答えは『愛の比ではない』。 それを聞いたオレは更なる絶望感から深い息を漏らした。
『おい良樹、そんな腑抜けてどうする。 お主が愛たちを守るのじゃろ?』
「あのー、お言葉なんですけど、相手は悪魔ですし……オレに出来ることってあるんですかね」
『ーー……ないな』
「がーーーーーーーん!!!!」
おいおいおい、じゃあオレにその情報を伝えてくれたとしても、オレには何も出来ないじゃねーか。
「これは……オレも何かしら出来るようになれってことか?」
オレは大きく深呼吸。 出来るようになるかどうかは分からないが、マリアに悪魔祓いのコツを教えてもらうことを心に決めたのだった。
◆◇
翌日の朝、昨夜の決意が新鮮な状態でマリアにダメもとでお願いしてみると、意外にもマリアからオーケーが出る。
「え、いいのか!?」
「いい。 舞が言ってた。 人に教えると、自分のためにもなる。 だからマリア、良樹に教える」
「おおおお!! ありがとうマリアああああ!!!」
夏休みは一ヶ月近くあるし、それだけ期間があればオレも少しはレベルアップするはず……だよな?
早速オレはマリア師匠に今すぐ悪魔祓いを教えてくれとお願いをする。 しかしマリアから返ってきたのは「夕方からならいい」だった。
「なんでだ、オレは準備できてる。 今からでもいいんだぞ?」
「それは無理。 マリア、今から愛と自由研究の課題をしに外に行く」
「え、そうなのか」
「そう。 お昼になったら一回帰ってくるけど、また出ていく。 良樹の特訓はそれから」
「ーー……結構忙しいな。 じゃあ別にあれだぞ? マリアがしんどかったら、別に明日からでもいいからな」
「ううん、今日からやる。 マリアも教えたい」
「りょ、了解」
マリア……なんていい奴なんだ。
オレは愛ちゃんマリアが外出するのを見送ると、一通りの家事を速攻で終了。 マリアたちの用事が終わる時間までゆっくり待っていようとリビングで横になっていたのだが、それは突然起こった。
「ーー……ん、なんだこの音は」
愛ちゃんたちが帰ってくるにはまだ早い時間。 玄関の扉が何度も暴力的に叩かれている音が聞こえてきたのだ。
「お、おおおお!? ま、まさか早速悪魔少女が来ちゃったのか!?」
寝落ちしかけていたオレはこの激しい音で一気に覚醒。 慌てて玄関へと走り扉を開けると、そこには見たこともない筋肉マッチョな外国人男性が鬼のような形相でこちらを睨みつけていた。
「ーー……え? 誰」
「×××!!! ××××ーー!!!」
「は?」
何やら意味のわからない言葉でブチギレているが、生憎オレのリスニング能力はゼロ。 ここは日本だしということで「日本語で話してもらえます?」と聞いてみたところ、男性の反応はまさに最悪そのものだった。
「××!!××ーーー!!!」
男性から飛んできたのは日本語ではなく、強烈なパンチ。
「ええええええ!?!? なんでええええええええ!!?!?」
男性の拳はオレの顔面にクリーンヒット。 オレは数メートル後ろへと吹き飛ばされてしまった。
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