124 ラブブレ③
百二十四話 ラブブレ③
まさかまた鉢合わせることになるなんて。
ラブブレを製造している建物に入り込んだオレたちの前に現れたのは、今でもトラウマ級の……教会以来の上級悪魔。 今は壁一面に描かれた魔法陣のようなものから顔を出しているだけの状態だが……これは今回もまだ完全体ではない、ということなのか?
「ーー……」
怯えつつ強制除霊を試してみるも、悪魔の様子は変わらず。
ただ幸いなことに、オレの体に傷……呪詛返しはきていない。
「てことはまだ純粋な悪魔……。 マリアを呼んだ方が良さそうだな」
霊を取り込んでいない純度の高い悪魔なら、オレの力でパワーアップさせたマリアの悪魔祓いの力でどうにかなる。
オレはマリアを連れてくるべく一歩下がる。 しかしそれと同時……メリッサが悪魔をマジマジと観察しながら「ほわー」と声を漏らした。
『あれは上級、流石に私には無理だぁ。 ネコちゃん、いける?』
メリッサがそう尋ねると、御白は視線を悪魔から逸らさずにに『愚問じゃ』と頷く。
え。
御白は眉ひとつ動かさずにオレの前へ。
そのまま悪魔に近づいて手をかざし、ゆっくりと口を開いた。
『貴様ハ……』
『黙れ。 消えよ』
『ーー……ッ!』
それは一瞬。
御白のかざした手のひらの先が光ったと思うと、悪魔の顔が一気に膨張して勢いよく破裂。 それを見届けた御白は悪魔の出ていた魔法陣のようなものを指差し、メリッサに傷をつけておくよう命じた。
『え、なんで傷つけるの? もういないんだよね?』
『ふむ。 古よりこういった類の呪術はの、形式を少しでも間違えるとその力は充分に発揮することは出来ず、それが負のものなら術者に影響を及ぼしてしまうことがあるのじゃ。 じゃから仮に後日ここの製造者がこの陣で再び悪魔召喚の儀を行ったとしても、術は不発……何かしら不幸なことが術者に降りかかるじゃろうて』
「へー、そうなんだ」
『なるほどー! さすがネコちゃん、物知りだねー』
確かにその方法ならオレたちが犯人をわざわざ見つけなくても、勝手に自滅してくれるっぽいし効率的だな。
オレは周囲を見渡して他に悪魔や邪魔をしそうな何かがないかを確認。 誰もいないことを確かめた後、右手側にあった事務所の扉を開けて入った。
「にしてもあれだな、御白お前どんだけ強いんだよ」
『なんじゃその言い草は。 妾を舐めておるのか? あんなもの赤子の手をひねるくらいには簡単じゃて』
ーー……じゃあそんな御白を苦戦させた覚醒・愛ちゃんってどれだけなんだ。
◆◇
事務所に入ると目的のものは一瞬で発見。
部屋の中央……細い長机の上に梱包袋と共に大量のラブブレが無造作に山積みに置かれている。
「いやもうちょっと警戒しとけって感じよな」
『おそらくはこの鉄の輪を先ほどの悪魔の近くに置いておき、負の力を纏わせていたのじゃろうな。 それと……良樹、あれをみよ』
「ん?」
御白が指さした先にあったのは梱包袋。 オレが頭上にはてなマークを浮かばせていると、『その袋の紋様を見てみい』と言葉を続けた。
「紋様? ーー……あ、あああああ!!! これあれか、さっき悪魔が出てきてたのと同じ魔法陣じゃねーか!!」
『そう、悪魔の負の力を纏わせた鉄の輪を、あの悪魔召喚陣の描かれた紙袋に梱包……負の力と紋様が互いに反応し、小さな悪魔が誕生していた……ということじゃな』
「おおおお!!!! なるほどおおおおお!!!!!」
御白曰く、元凶の魔法陣がうまく機能しなくなっているため、ラブブレ自体は放置しても何も問題ないとのこと。
しかし御白は縁結びの神……恋愛成就を謳ったこのリングが余程気に入らなかったのだろうな。 御白は再びメリッサに命令。 室内に残るラブブレを全て破壊させ、梱包袋も全て破らせたのだった。
『あーははは!! これでこの鉄の輪を製造していたものは終わる!!! それすなわち、妾の神社に参拝者が増えるというものよ!! あーははは!!』
◆◇
後日、テレビを見ていると地元のニュースが流れ、あのラブブレを製造していた建物が火事になったと報道が。
原因はタバコの不始末で、契約していた女性が放火の罪で捕まっていた。
「ん、ていうかあの女の人って……。 なぁマリア、テレビ見てくれ」
オレの声を聞いたマリアが、グミを頬張りながらオレの隣にやってくる。 そしてオレの視線の先……テレビ画面を見るなり、マリアの目が大きく見開かれた。
「あ、おばさん。 また捕まってる? なにがあった?」
「ーー……」
やっぱり見違いではなかったか。 まさかのラブブレの犯人が、マリアをいじめてた教会のババァだったなんて。
もしかしてあのラブブレで不幸な人を増やして……またあの時と同じことをしようとしていたのではないか?
まぁでもあのババァが、メリッサが傷付けた欠陥魔法陣で悪魔の召喚を試みたのは確かなんだよな。
ラブブレ製造者がいなくなったことにより、ラブブレの話題は一気に減少……そのうち皆付けなくなっていったのだった。
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